研究課題
今年度は、(1)構築した3ω法薄膜熱伝導率測定装置の改良と評価、(2)TTF-Ix薄膜の電気伝導率とゼーベック係数の測定を行った。詳細を以下に記す。(1)3ω法薄膜熱伝導率測定装置で使用しているロックインアンプの時定数設定と自動感度設定を調整することで、測定誤差を大幅に低減することに成功した。改良後に測定したガラスの熱伝導率は1.20(2) W/mKとなり、測定誤差を±2%に抑えることができた。さらにSiとAl2O3の熱伝導率測定を試みたところ、熱伝導率の高いこれらの試料では、測定誤差が大きくなることが分かった。一般に、低分子有機物薄膜はガラス並みの熱伝導率であることから、本研究で構築した3ω法薄膜熱伝導率測定装置で熱伝導率を計測することは十分可能であると考えられる。(2)有機物TTF-Ix の結晶構造解析の結果をもとに、作製したTTF-Ix粉末と薄膜の組成を算出した(x粉末=0.68216(1)-0.748118(7)、x薄膜=0.7011(8) -0.7470(3))。TTF-I0.71薄膜の成膜直後のゼーベック係数は22 μV/K、電気伝導率は120 S/m、出力因子6×10-8 W/mK2であるのに対し、時間経過にともなってゼーベック係数は減少、電気伝導率は増加、結果として出力因子は減少することがわかった。その原因が薄膜内でのヨウ素の拡散によるホールキャリア密度の増加と移動度の低下であると考察した。熱電特性が一定値に収束した薄膜において、ヨウ素の組成が小さい薄膜ほどゼーベック係数が大きくなる傾向が現れた。経時変化が収束した薄膜における最大のゼーベック係数は6.0 μV/K、最大の出力因子は9.8(10)×10-9 W/mK2であった。TTF-Ix薄膜を熱電材料として活用するためには、電気伝導率ゼーベック係数の向上が不可欠であることが判明した。
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RSC Advances
巻: 5 ページ: 48217-48223
10.1039/C5RA03935E
http://www.apph.tohoku.ac.jp/ymiyazaki-lab/naiyou/syousai/TTF-TCNQ.htm
http://www.apph.tohoku.ac.jp/ymiyazaki-lab/naiyou/syousai/Pentacene.htm