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2014 年度 実施状況報告書

新規櫛型電極による非標識バイオセンサの高感度化

研究課題

研究課題/領域番号 25390050
研究機関東京海洋大学

研究代表者

大貫 等  東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (60223898)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード電気化学インピーダンス / バイオセンサ / アフィニティ反応 / くし形電極
研究実績の概要

昨年度の成果を踏まえ,本年度は具体的な抗原-抗体反応を用いてアフィニティ吸着反応を検知するセンサの開発を行った.当初,ヒトIgEセンサの開発を想定していたが,同じヒトイムノグロブリンであるヒトIgGを検知するセンサの開発に切り替えた.
Protein GおよびProtein AはIgGとの間で特異結合を形成することが知られている.本研究ではこれらを認識分子として表面上に固定化し,特異結合するIgGをインピーダンス分光法を用いて定量化する.ここでは特異結合する分子対が多いほど変化幅が大きく,より正確な測定ができる.そこで表面をポリマー修飾し,多くの認識分子を固定化することで分子吸着量を増大できると考え,実験を進めた.
ポリマーにおける非特異的な分子吸着を防ぐため,本実験ではこれを生じないカルボキシベタインポリマーのポリマーブラシを電極上に成長させた.しかし試料のインピーダンスが非常に大きな値となり,そのためIgG吸着によるインピーダンス変化が覆い隠され,センサの感度を極端に低下させてしまうことが分かった.
緻密な膜形成はセンサにとって不利に働くことを踏まえ,長さの異なる2種類のチオール分子による自己組織化膜(SAM)の作製を行い,この表面上に認識分子を固定化することを試みた.すなわち,認識分子を固定化可能な活性末端基を有する長いチオール分子(MUA)および,擬似的な空隙となり得る不活性末端基を持つ短いチオール分子(MCH)を混合することで,バイオセンサとして適切な空隙を有する表面構造を実現できると考えた.MUAとMCHの比率を変化させながら作製したSAM上にProtein G および A を固定化し,IgGセンサとしての特性を評価した.その結果,MUA:MCH=1:3 のSAMにProtein Gを固定化した試料では,最低検出濃度 0.1 ng/mL のセンサとなることを見出した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

MUAとMCHによる混合SAMを用いてProtein Gを固定化すると,最低検出濃度 0.1 ng/mL のセンサを作製できることが分かった.現時点までに,EIS法を用いたセンサとしは6.2 ng/mL が報告のある最高感度であり,本センサはこれを一桁程度上回っている.従って,研究実施計画の目的として挙げていた高感度測定の実現はほぼ達成された.また,センサの選択性に関してBSAおよびIgAを用い,インピーダンス変化量を調べたところ,ほとんど変化を引き起こさなかった.従って本センサの選択性も確認できた.
一方,血液などの生体試料中のIgG濃度に関してはまだ実験していない.これは,センサの最適化が完全にはできておらず,さらに高性能な特性が得られる可能性があるなど,基礎的なセンサ作製スキームが完成していないためである.

今後の研究の推進方策

混合SAMを用いると高感度なセンサを作製できるのはなぜか?我々は,SAM中に適切な空隙が生じ,ここを通過して電流を運んでいるレドックス種が選択的な分子吸着によりブロックされることで,より大きなインピーダンス増加を引き起こすため,と考えている.しかしこのメカニズムは実験的に確認されておらず,詳細は不明のままである.一方,本試料の高感度性の起源が解明されれば,一般のEIS法の感度向上にも適用できる基礎技術となり得る.そこで今後は,原子間力顕微鏡など表面構造の観察・二つのSAM構成分子の長さ比の検討・ブロッキング分子の効果など膜構造とEIS法感度との関係を解明する方針である.
生体試料中のIgG濃度測定に関しては上記メカニズムの解明にめどが立ち,最適な試料作製のスキームを決定した後に進める予定である.

次年度使用額が生じた理由

当初の計画では自動接触角計を購入する予定であった.しかし実験を進めるにつれ,同じ処理をした複数のサンプル間において実験結果のばらつきが大きいことが問題となった.この原因として,クリーンルーム中で作製した金電極パターンを通常の実験室内で表面処理する際に付着するダストの可能性が高いことが,AFM測定等から明らかになった.そこで自動接触角計をとりやめ新たにクリーンベンチを購入し,表面処理を清浄な環境下で行うことができるようにした.この変更の差額として次年度使用額が生じた.

次年度使用額の使用計画

当初の計画では再現性確認が非常に重要になってくるのを予想できず,この経費を計上していなかった.しかし現時点では再現性確認のため,くし形電極パターンを施した石英基板および高純度試薬が多数必要になっている.次年度使用額として繰り越した金額は,これらの作製費および購入費として使用する予定である.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Impedimetric and amperometric bifunctional glucose biosensor based on hybrid organic-inorganic thin films2015

    • 著者名/発表者名
      Huihui Wang, Hitoshi Ohnuki, Hideaki Endo, and Mitsuru Izumi
    • 雑誌名

      Bioelectrochemistry

      巻: 101 ページ: 1-7

    • DOI

      10.1016/j.bioelechem.2014.06.007

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Fish stress become visible: A new attempt to use biosensor for real-time monitoring fish stress2015

    • 著者名/発表者名
      H. Wu, A. Aoki, T. Arimoto, T. Nakano, H. Ohnuki, M. Murata, H. Ren, H. Endo
    • 雑誌名

      Biosensors and Bioelectronics

      巻: 67 ページ: 503-510

    • DOI

      10.1016/j.bios.2014.09.015

    • 査読あり
  • [学会発表] 魚類のためのコルチゾル測定用フロー式免疫バイオセンサシステムの試作2014

    • 著者名/発表者名
      呉 海雲,大貫 等,任 恵峰,遠藤英明
    • 学会等名
      日本水産学会
    • 発表場所
      九州大学
    • 年月日
      2014-09-19 – 2014-09-22
  • [学会発表] Application of Pt-Au interdigitated array electrodes for biosensing2014

    • 著者名/発表者名
      S. Mukoyama, H. Ohnuki, H. Endo, D. Tsuya, and M. Izumi
    • 学会等名
      Biosensors 2014
    • 発表場所
      Melboume
    • 年月日
      2014-05-27 – 2014-05-30

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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