研究課題/領域番号 |
25390051
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
馬場 暁 新潟大学, 研究推進機構超域学術院, 准教授 (80452077)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / 有機太陽電池 / 金属格子 / 金属微粒子 / ナノインプリンティング |
研究概要 |
本研究では、金属薄膜格子/有機薄膜-金属微粒子界面において、入射光を伝播型・局在型のプラズモンとして電界を増強してナノ領域に閉じ込める光トラッピングに関する基礎的な研究を行った上で、この系を導入した有機太陽電池を作製してデバイス特性の向上に向けた研究を行うことを目的とした。 この目的を達成するために、今年度はナノインプリント法により有機薄膜上に一次元グレーティングナノ構造、二次元グレーティングナノ構造(ナノドット、ナノウェル構造など)を作製し、その上に金属薄膜を堆積することで有機薄膜/金属界面における表面プラズモン共鳴特性の評価を行った。この結果、それぞれの構造において良好な表面プラズモン励起を確認することができた。また、この金属格子上に金微粒子または銀微粒子を堆積することで、局在プラズモンと伝播型表面プラズモンの同時励起超吸収構造のための基礎特性の評価も行った。次に、種々のナノインプリントされた格子構造を利用した有機薄膜太陽電池の作製を行った。これは、まず、ITO上にP3HT:PCBM光電変換薄膜、PEDOT:PSS薄膜をそれぞれスピンコート法で堆積した。次に、テンプレート基板からナノインプリントで作製したPDMSスタンプを用いて、PEDOT:PSS薄膜上に種々の格子構造のナノインプリントを行った。AFMでの観察により、良好に格子構造が作製できていることが確認された。この上からAlを真空蒸着法で堆積して種々の格子構造を有する有機薄膜太陽電池とした。まず、格子無し、一次元格子、代表的な二次元格子を有する有機薄膜太陽電池の電流―電圧特性の測定を行った。この結果、格子無し=>一次元格子=>二次元格子の順に効率の増加傾向が得られた。このことから、表面プラズモン共鳴励起により効率上昇が行えることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記目的を達成するために、平成25年度は主に次の2項目を研究実施計画として進めた。 (1)ナノインプリント法を用いた微細構造制御による多重励起型プラズモニック格子電極の検討 (2)ナノインプリント法を用いた微細構造を利用した有機薄膜太陽電池の作製と評価 今年度は実施計画に沿って、ナノドット構造、ナノウェル構造、ナノハニカム構造をナノインプリント方により作製して、その上に金属薄膜を堆積して、表面プラズモン共鳴特性を検討した。さらに近微粒子・銀微粒子を堆積して、局在プラズモン・伝播型プラズモンの多重励起プラズモニック構造を作製して、格子構造を作製して多重励起型プラズモニック格子電極の評価・検討を行った。この結果、広範囲での入射角度や偏光方向において良好な表面プラズモン励起構造を作製することができた。この結果を基に、今年度は有機薄膜太陽電池を作製した。その結果、二次元の格子構造を有機薄膜太陽電池に導入することで光電変換効率の向上が行えることが明らかになった。 以上のように、目的・計画の(1)(2)を実施して成果が得られており、概ね当初の計画通り達成できた。これらの結果は、すでに1編国際論文誌に掲載決定されており、さらに現在2編国際論文誌に投稿中、2編投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はこれまでに得られた研究をさらにすすめ、計画通り金属微粒子による広波長域局在プラズモン励起薄膜の検討や超吸収構造有機太陽電池の作製・評価を行う。金属微粒子層の層間隔を変化させることによるプラズモン励起電界の影響と光電変換効果を詳細に調べ、FDTD電界計算の結果もフィードバックして検討を行う。また、金属格子薄膜上への作製も行い、伝播型表面プラズモン励起と局在プラズモンの相互作用について、デバイスにレーザを角度を変えて入射し反射率を測定することによって得られる表面プラズモン共鳴分光特性の角度依存性を詳しく調べる。さらに、角度を固定し白色光を入射し、波長を掃引して得られる波長依存表面プラズモン共鳴分光特性も測定することによって、局在表面プラズモン吸収と伝播型表面プラズモン励起の関係の波長依存性を調べる。 また、得られた成果は国内・国外の学会で報告を行うことにより公表し、また、国際論文誌での誌上発表も積極的に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、研究を遂行するための消耗品に経費がかかり備品を購入しなかったこともあり、結果として、残額213,201円が生じた。 平成26年度は概ね当初の計画通りに研究費を使用する。消耗品としては、種々の構造の有機薄膜、格子構造、透明電極を作製するために必要な物を挙げている。基板洗浄用の有機溶媒やポリチオフェン・フラーレンなどの有機分子、薄膜表面評価のためのAFM測定用のカンチレバーなどに使用する。さらに格子基板形状の最適化のための種々格子基板等を購入し実験を進める。また旅費としては、情報収集や得られた成果の発表を行うために、応用物理学会、電気学会、さらに有機エレクトロニクスに関する国際会議に参加する。他には、実験補助としての謝金や、その他学会参加費、論文投稿料などとしても研究費の使用を行う。
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