研究課題/領域番号 |
25390054
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
喜多 隆介 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90303528)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超伝導 / 薄膜 / ナノ構造 / ピニングセンター / 有機金属塗布法 / 化学溶液法 |
研究概要 |
平成25年度は、これまでの研究成果を基にしたケミカルドーピングによる超伝導薄膜のエンジニアリング技術により、超伝導薄膜中へZrを人工ピンとして導入する際の、Zr原料溶液濃度や熱処理パラメータが人工ピン形成に及ぼす影響について検討した。まず、人工ピンとして用いる金属オクチル酸Zr溶液濃度依存性について検討した。作製した膜をX線回折測定を行った結果、Zr溶液濃度が1wt%から5wt%においてはGdBCO超伝導相の結晶化には大きな影響を与えることはなかった。しかし、Zr溶液濃度が5wt%を超えると超伝導相は結晶化が難しくなり、10wt%では結晶化が見られなくなった。この結果から、Zr溶液濃度は5wt%が適していることが分かった。次に、Zr添加GdBCO薄膜形成における2ステップ熱処理パラメータについて検討した。ZrがBaZrO3を形成する温度である500-600℃で第1ステップの熱処理を行い、続いてGdBCO超伝導相が結晶化する800℃以上で熱処理を行った。その結果、第1ステップを550℃とすることにより、磁場中の超伝導臨界電流輸送特性が向上し、人工ピン形成に有効であることが分かった。これらのZrを添加した膜を高分解能透過型電子顕微鏡および電子線回折測定により観察した結果、超伝導薄膜中に、BaZrO3ナノ粒子が形成されていることを確認した。これらの結果は、添加したZrはBaZrO3粒子として形成させることを示している。また、新たに超伝導薄膜を形成する希土類元素を2つ以上混晶化することにより、超伝導特性が著しく向上することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に検討を予定した項目は2つあり、1つは添加する人工ピン原料としてのZrについて、Zr濃度が超伝導相の結晶化および超伝導特性に及ぼす影響について調べることである。これについては、Zr添加濃度と超伝導相の結晶化および成長について明確にし、最適なZr濃度が存在することを明らかにした。また、2つ目は、人工ピン添加超伝導薄膜の熱処理において2ステップ熱処理パラメータを検討することである。これについては、第1ステップの熱処理として、BaZrO3が結晶化する温度付近の温度で熱処理を行った後、超伝導相が結晶化する高い温度に上げて熱処理することにより、磁場中超伝導特性が向上することを明らかにしており、研究計画は順調に進展してる状況にあると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により、Zrが人工ピンとしてBaZrO3を形成することを見出したが、その分布形態に付いて明確になっていない。次年度以降、これについてはより詳細に各熱処理時にどのようなナノ組織が形成されているか、高分解能観察を進めることにより人工ピン形成過程について明らかにする。また、25年度末に見出した希土類元素混晶化の効果について、どのような元素をどのような比率で混晶化すればよいのか、またそのメカニズムについて詳細に検討を進めていく方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
超伝導薄膜作製用に通常使用しているLaAlO3基板の使用数が、実験プロセスを見直すことにより当初予定枚数より約60枚程度少なかったため。 次年度は新たに超伝導薄膜の希土類元素混晶化について追加実験として取り組むことを計画しているため、使用する基板数が当初予定より増加する見込みであり、この基板の購入に充当する予定である。
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