研究課題
本研究は「励起スピンの緩和の磁場による制御」に関する理論的研究である.ここでの緩和はスピン-原子振動相互作用Vによって生じるとする.このVは3d軌道の形状に強く依存し,その形状は交換分裂磁場H(∝磁化)とスピン軌道相互作用V_soに依る.我々はこれまでに,HとV_soを持つ3d軌道を解析的に求め,3d軌道の磁化方向依存性を調べてきた.さらにその磁化方向依存性を直接調べ得る異方性磁気抵抗(AMR)効果についても研究を行ってきた.今年度は,Hと関係づけられるフェルミ準位上の状態密度のスピン分極率P_Dと抵抗率のスピン分極率P_rに注目し,これらをAMR比から評価する手法の開発に取り組んだ.この手法が確立するとAMR比(測定は容易)からP_DとP_rを評価できるようになる.今回我々は,「1. ハーフメタルに近い強磁性体のP_DとAMR比の間の関係式およびP_rとAMR比の間の関係式の導出」と「2. ホイスラー合金Co2FeGa0.5Ge0.5(CFGG)のP_DとP_rの評価」を行った.詳細は以下の通りである.1. AMR比とP_Dの間とAMR比とP_rの間に正の相関が確認された.この結果は,CFGGのAMR効果とCFGG/金属/CFGG接合の巨大磁気抵抗効果で観測された正の相関(実験結果)を定性的に説明する.なおここでは,ボルツマン理論を用いて抵抗率の計算を行った.電子の散乱過程は,自由電子から自由電子へのフォノンまたは不純物による散乱,自由電子から3d軌道への不純物による散乱である.2. 上記の関係式を用いてCFGGのAMR比のアニール温度依存性(実験値)からP_DとP_rのアニール温度依存性を大雑把に見積もった.P_rが以前の評価値と一致するときのパラメーター(アップとダウンスピンの電子の有効質量比)では,P_Dは0.6程度になった.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 備考 (3件)
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