研究課題/領域番号 |
25390056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
平野 義明 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 特命助教 (10434896)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 確率共鳴 / 熱ノイズ / 分子デバイス |
研究概要 |
今年度は、マンガン12核錯体(Mn12)とDNAの複合体ネットワークをシリコン基板上に固定化後に、二端子のナノギャップ電極を取り付けてデバイスを作製し、熱雑音をエネルギー源とした確率共鳴実験を行った。10~75 Kまでは、入力した方形波信号に対して出力信号が得られなかった。しかし、90~300 Kの範囲では、出力信号が得られ、温度上昇に伴って出力信号の強度が大きくなることが分かった。入力信号と出力信号に関する相関係数と出力信号のSN比を見積もったところ、両値は、温度の増加に伴って上昇し、飽和する傾向があった。これらの結果は、熱雑音をエネルギー源とした確率共鳴現象を再現したことを示唆している。 興味深い結果としては、熱雑音を用いた場合と4 Kで方形波とホワイトノイズを用いた場合の相関係数とSN比の変化の結果である。両確率共鳴実験の相関係数の変化の程度は、類似傾向である。しかし、SN比においては、熱雑音を利用した場合、ホワイトノイズを用いた場合よりも、SN比が約7倍も向上することが分かった。この結果から、熱雑音が効果的に作用したことを意味しており、超低消費電力デバイスの指針が得られた。また、上記の実験結果は、二端子電極の結果であるが、一定の方形波信号の入力に対して、加算器を用いずに独立に熱ノイズを加えているため、今後、多端子電極を利用した確率共鳴実験の実現性を明確に示すものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、ナノトランスファープリンティング法を用い、多端子電極作製に基づく確率共鳴実験を10Kで行う予定であったが、まず、二端子電極を用い、熱ノイズを利用して確率共鳴実験を実施した。熱ノイズを加えて、確率共鳴現象の再現に分子系で初めて成功し、SN比も著しく向上することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、難航しているナノトランスファープリンティング法での電極作製の継続と用いている分子のマンガン12核錯体とシトクロムc以外の分子での電流-電圧特性に関する基礎研究を今後の研究の推進方策として考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
理由は、主に以下の4点からなる。 (1) UV-オゾンクリーナーの装置を購入する予定であったが、研究室に備え付けのプラズマ処理装置を代替として用いたため。(2) 温度コントローラも購入予定であったが、コントローラーを使用しなくても研究がスムーズに進展したため。(3)、ノート型のパソコンを購入する予定であったが、デスクトップ型のパソコンを購入したため。(4) 研究成果発表において、共同研究者や講演依頼者の方に旅費を負担して頂いたため。(5)科研費以外の研究費を2013年3月31日までに完全に使い切らないといけない制約があり、消耗品などをそちらの研究費で使用したため。 UV-オゾンクリーナーの装置と解析用のノートパソコンは、今年度、購入予定である。
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