研究課題/領域番号 |
25390058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
本間 道則 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (90325944)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液晶 / マイクロラビング |
研究概要 |
ポリイミド配向膜の表面に微小な金属球を用いたマイクロラビング処理を適用することによって作製した液晶セルにおける液晶分子配向特性の評価を行い,さらにマイクロラビング処理の条件が液晶の配向特性に与える影響について考察を行った。得られた結果について以下に述べる。 (1)ラビング幅の精密制御のためのマイクロラビングの条件の考察 垂直配向用ポリイミド配向膜(SE7511L,日産化学工業)に1 本の配向処理ラインを書き込み,処理を行わない基板と組み合わせることにより液晶セルを作製した(液晶層厚:20 μm,液晶:610019(LCC))。液晶の配向状態を偏光顕微鏡により観察し,配向処理ラインの幅の定量測定を行った。その結果,金属球の走査速度が2 μm/sの場合においては,処理幅は荷重(0.5~2.0 mN)にほとんど依存せず概ね一定(7.9 μm)となり,この条件において一定の幅の配向処理ラインが安定して得られることが明らかとなった。 (2)弾性エネルギーの緩和長(弾性エネルギーが空間的に緩和して一定の配向状態になるまでの距離)の考察 液晶セルの偏光顕微鏡観察によると,マイクロラビング処理領域においては液晶の配向は一様であり,その外側において液晶の配向状態が徐々に変化する遷移領域が観測された。この遷移領域の幅を緩和長としてマイクロラビング処理の条件との関係を考察したところ,以下の結果を得た。①走査速度が2μm/sのとき,緩和長は荷重に依存せず一定(12.6μm)であった。②走査速度が5μm/sのときは,緩和長は荷重の増加とともに長くなることが分かった。走査速度によってマイクロラビング処理により得られる液晶のチルト角が変化することを意味している。逆に,安定な配向状態を得るためには走査速度を2 μm/sとすればよいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属球を用いたマイクロラビング処理により一定の幅の配向処理ラインが得られる条件を確認することができ,さらに偏光顕微鏡観察により配向状態が徐々に変化する遷移領域の幅についても考察し,荷重の変化に依らず遷移領域の幅が一定になることが明らかとなった。以上のように,所望の液晶配向を得るためのマイクロラビング処理の条件(走査速度および荷重)が明らかとなったため,概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は微細な配向処理パターンとバルク液晶の配向場との相互作用について考察する。マイクロラビング処理により周期的な微細配向処理パターンを書き込んだ評価セルを作製し,レーザー光を入射したときの回折特性を詳細に解析することによってバルク層の配向状態を把握する手法の構築を試みる。具体的な実験手法は次の通りである。評価セルとして,配向方位が周期的に変化したホモジニアス配向セルおよびTN(ツイステッドネマティック)配向セルを作製し,He-Neレーザーを入射したときの回折光の強度と偏光状態を測定する。このとき,マイクロラビングパターンの周期は5~100μm,液晶層の厚みは5~20μmとする。さらに,液晶分子配向状態のコンピュータシミュレーション結果から回折光強度と偏光状態を算出し,実験結果との比較を行うことにより,バルク層の3次元的な配向状態の同定を試みる。
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