研究課題/領域番号 |
25390060
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐々木 史雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 上級主任研究員 (90222009)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機半導体レーザー / マイクロキャビティ / (チオフェン/フェニレン)コオリゴマー / pn接合 / キャリアドーピング / ダブルへテロ構造 / 有機EL |
研究実績の概要 |
室温での光学・伝導特性共に優れた性能を持つ有機半導体材料(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)に微細加工を施し、少ないキャリア注入でレーザー発振が得られるような微小共振器と電流注入デバイス構造とを両立させる有機結晶薄膜作製技術と加工プロセスの開発を進めている。本年度は昨年度整備したスライディングボート装置を用いて結晶性薄膜での三層積層構造(ダブルへテロ構造)を作製した。その際、原料がスムーズに流れ出るように、かつ必要以上に漏れ出すことが無く、制御された成膜レートを実現するため、るつぼスリットを狭くする必要があり、特注のるつぼを一部本年度予算で追加発注した。その結果、3層積層で1ミクロン以下の成膜が可能になった。また、今まで蒸着膜などで積層化した場合には光励起発振する膜を作ることが困難であったが、今回、3層積層膜でも光励起発振を実現できた点で、大きな進展があった。現在その結果について投稿論文作成中である。残念ながら電流注入型素子としては、現状使えないことが明らかになった。原因は結晶膜中のピンホールやマイクロクラックなどの影響で電流リークが生じ、LED動作できないことであった。今後、リークの無い結晶性ダブルへテロ有機膜を形成し、そのLED動作を目指す。さらに、本年度備品で購入したデジタルオシロスコープと昨年度別予算で準備した高速電力増幅器を組み合わせ、このLEDの高速電気パルス特性の評価などを進め、電流注入性の向上を図る予定である。他にも、TPCO系のみならず、新規有機発光性材料での微小共振器作製や時間分解分光などの各種共同研究が進んでいる点など順調に成果が出ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機半導体系におけるスライドボート法による結晶性積層膜でのダブルへテロ構造形成と、その光励起発振に成功したことはいずれも初めてのことなので、高い目標の割には実現できた点、非常に順調に研究が進展していると言える。但し、有機結晶性薄膜での低抵抗を実現するためのドーピングについては実現例もほとんど無く、現在有効な手法が明確にはなっていない。その点のめどをつける新たな開発や知見が今後必要になってくると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
電流リークの無いダブルへテロ積層構造と結晶性薄膜の実現との両立を目指す必要が出てきた。有機ELにおいてピンホールの無い成膜は必須で有りそれを結晶性薄膜で実現することは非常に困難である。ここでは、TPCO系材料としての良好性を示すことが優先するので、局所的にでもリークの無い結晶性ダブルへテロ積層構造を試作する点を試みる。微小共振器形成との整合性は良い課題なので、局所的電極形成プロセスを工夫することでその実現を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
別予算で支出した旅費や消耗品費分が差額として生じた。本年度に使用予定。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の装置改造や各種消耗品などに利用予定。
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