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2013 年度 実施状況報告書

種々のリン酸塩とその複合化物におけるプロトン伝導機構の統一的モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 25390062
研究種目

基盤研究(C)

研究機関茨城大学

研究代表者

高橋 東之  茨城大学, 理工学研究科, 教授 (30202154)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードプロトン伝導 / リン酸塩複合化物 / 中性子回折
研究概要

Pb2HP3O10系とNH4AlHP3O10系について31P MAS NMR、1H MAS NMRならびに1H NMR化学シフトの温度依存性を測定した。伝導度測定からPb2HP3O10系は室温以下でVTF型の温度依存性を示すことをすでに明らかにしているが、1H NMRの温度依存性からも200K付近で急激にプロトン運動が消失していることが分かった。これに対して、NH4AlHP3O10系では、ほぼ273Kで急速にNMR線幅が広がり、プロトン運動が失われていることが明らかになった。また、31PのNMR測定から、Pb2HP3O10系はリン酸としてPO4が、NH4AlHP3O10系ではPO4とともにこれが縮合したP2O7が複合化していることを見いだした。
これらの結果は、Pb2HP3O10複合化物ではPO4のリン酸とともに固有の水分子を保持しており、この水分子またはリン酸運動が凍結する200K付近までプロトン伝導を示すと考えられる。一方、NH4AlHP3O10系では高いプロトン伝導に必要な水を雰囲気から得ており、水の凝固点である273K付近で凍結するため、この温度を境にプロトン伝導性が失われるものと思われる。さらに、雰囲気中の水が高いプロトン伝導に関与しているとするとプロトン伝導度が水蒸気分圧に依存するという結果も理解することができる。これらの知見は水分子がどのような状態存在するかを明らかにすることで、温度依存性や水蒸気分圧依存性を理解することが可能であることを示唆している。
Pb2HP3O10については、すでに重水素置換試料で中性子結晶構造解析を行っているが、重水素での置換なしにあらためてPb2HP3O10とNH4AlHP3O10について中性子回折測定を行い、J-Parcの大強度パルス中性子を用いることで重水素置換を行うことなく、水素位置を含む構造解析が可能であることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書に記載したふたつの化合物について、重水素置換によらない中性子結晶構造解析をJ-Parcの粉末回折装置を用いて行い、水素位置を含む解析を行うことができた。また、NMR測定についても共同研究を行っている産業技術総合研究所において実施して低温でのプロトン運動について明らかにし、当初の目的を達成することができた。
さらに、次年度以降むけて新たに興味深い知見が得られたことから、研究全体の目標に向かって順調に進展していると自己評価する。

今後の研究の推進方策

複合化物として見た場合、プロトン伝導度やその温度依存性、水蒸気分圧依存性を理解する上で、共存するリン酸と水の存在状態との相関を広範な系で明らかにすることが重要となる。そのために、複合化の基材として結晶化合物のみならず多孔性材料も水分子の存在と高いプロトン伝導を高温まで保持できるかを検討する上で興味深い。そのため、多孔質ガラスや多孔質ゲルとリン酸との複合化物について、さらに、単体で高いプロトン伝導を示すSnP2O7や無機固体酸もプロトン伝導と水という共通の視点から統一的に理解することを目指す。

次年度の研究費の使用計画

当初から購入を予定していた物品の納品価格が想定より多少低かったこと、また、予定していた実験補助による謝金を今年度使用しなかったため。
物品使用予定の剰余分については、新たに試料保存用として真空デシケータ購入に充て、解析データの増大に対応して、今年度未使用分の謝金を次年度使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] CsH2PO4-CsHSO4系の状態図とプロトン伝導2013

    • 著者名/発表者名
      高橋東之、鈴木善貴、佐久間隆
    • 学会等名
      第39回固体イオニクス討論会
    • 発表場所
      熊本
    • 年月日
      20131120-20131122
  • [学会発表] Proton conducting properties of phosphated porous silica glasses2013

    • 著者名/発表者名
      H. Takahashi, K. Futada and T. Sakuma
    • 学会等名
      19th International Conference on Solid State Ionics
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20130603-20130607

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公開日: 2015-05-28  

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