研究課題/領域番号 |
25390063
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
櫻井 岳暁 筑波大学, 数理物質系, 講師 (00344870)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 不純物添加 / 結晶成長 / 電子状態 |
研究概要 |
本年度は、結晶成長過程を制御する前段階として、太陽電池を構成するC60(アクセプタ)ならびにSubPc(ドナー)材料に添加可能な効果的なドーパント材料を調査した。評価手法として、二端子法を利用した電気伝導度測定(暗、光照射状態)、ならびに放射光X線回折を利用した。光照射にはソーラーシミュレータ光(AM1.5, 100mW/cm2)を利用した。 まず、C60薄膜については、Caをわずか0.2モル分率の添加すると、暗、明状態ともに伝導度が100倍程度向上することが明らかになった。一方、この添加量を増やすと、暗状態の伝導度は向上するが、光電流は実質的に観測されなくなった。これは、多量にCaを添加すると、フェルミ準位がLUMO準位中に侵入し、薄膜が金属的な電気特性に変化するためと理解した。もしくばCaクラスターの形成に伴う、膜中ホッピング伝導の増強によるものと解釈されるが、これを検証するには光電子分光による電子状態観測や表面増強ラマン分光測定[2]が有効と考えられる。Ca添加C60薄膜のX線回折を観測したところ、光電流の増大も観測される0.2モル分率ではC60の結晶性は多少乱れる(回折ピークが小さくなる)のに対し、0.6モル分率まで増やすと回折ピークがブロード化し、1モル分率を超えるとアモルファス化することも明らかになった。よって、この系のターゲットとしては、結晶構造が保たれ、かつ電気特性が向上する0.2モル分率添加ぐらいであることが明らかになった。 一方、SubPc薄膜に有効な添加剤はMoO3などが考えられるが、C60-Ca系のように劇的に改善される効果は現時点では見出していない。 Ca添加C60膜を利用して太陽電池を試作したところ、添加後に初期効率1.4%が20%程度向上することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ターゲットとなる薄膜材料ならびにドーパント材料を見つけ、電気特性と添加効果に対する物理的背景の解明に着手することができた。今後、結晶成長法の改善によりさらに良質な薄膜成長が可能になれば、太陽電池特性の改善に結びつくと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は結晶成長法の改善、電子状態観測、太陽電池特性との相関について理解を深めたい。特に、研究代表者が有する放射光解析技術を駆使し、より精密な構造/電子状態制御を目指したい。
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