研究課題
サブフタロシアニン(SubPc)薄膜はC60薄膜と比較して、不純物ドーピングに対する電気特性の向上が見られない。そこで、紫外光電子分光と逆光電子分光を利用し、これらの薄膜の電子構造に関する比較研究を行った。その結果、C60薄膜については、膜厚が増加してもエネルギー準位の位置に大きな変化は現れず、ほぼフラットな電子構造を取るのに対し、SubPc薄膜では膜厚の増加に伴いエネルギー準位がシフトし、バンドベンディングが発生することが判明した。このバンドベンディングの特徴は以下の通りである。(1)SubPc薄膜は、成長初期は基板界面のフェルミ準位の位置に依存して異なるエネルギー準位をとるが、膜厚の増加に伴いIntrinsicなエネルギー位置(真空準位-4.1 eV)に収束する。すなわち、低仕事関数基板に形成したSubPc薄膜では上方向に、高仕事関数基板では下方向に、バンドベンディングが発生する。(2)アニール処理を施したSubPc薄膜では、バンドベンディングが消失し、C60薄膜と同様フラットな電子構造を取る。以上の電子構造の変化は、SubPc分子の大きな双極子モーメント4.6 Debyeに起因することが判明した。具体的に、SubPcは分子構造が平坦でないため、室温成長時にはランダム配向を取りやすい。このとき、分子の双極子モーメントが局所電場を誘起し、隣接するSubPc分子のHOMO準位やLUMO準位の電位揺らぎ(Tail State)を作り出す。このTail Stateに電荷が蓄積し、バンドベンディングが発生した。アニール試料では、規則正しい配列により局所電場が打ち消され、バンドベンディングが起こらなかった。また、C60の場合は、球状分子で双極子モーメントがなく、局所電場が発生しなかった。以上の考察より、SubPc薄膜ではドーピング効率の向上に構造物性制御が不可欠と結論付けた。
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