白色LEDをはじめとする照明用途光デバイスの高効率化、電力変換を担うパワーデバイスの高耐圧化、低損失化のために高品質のIII族窒化物半導体結晶の創製が求められている。本研究では新規の面方位制御技術を提案し、非極性面III族窒化物半導体の成長方法、結晶内貫通転位低減方法の確立のためのGaAs基板加工およびそれに続く結晶成長の検討を行った。 平成25年度において、GaAs基板のリン酸および過酸化水素による加工条件の確立およびInN選択成長の基本条件の検討、平成26年度はInN成長の面方位選択性向上のための成長条件の確立、GaAs(111)Aファセット面を選択的に形成するエッチング条 件の確立およびその上のInN選択成長、長時間成長による半極性InN膜の形成技術を確立した。また、H25年度において、GaN成長を行う際成長温度の高温化に伴ってGaAs基板劣化が生じること、また、H26年度にGaAs基板加工において(111)A面ファセットは平坦な表面が得づらいのに対し、(111)B面ファセットは比較的良好な表面が形成できることが明らかになったことから、H27年度は積極的に(111)B面上のGaN成長を検討した。GaAs(111)B面上へのGaN成長は原子配列の関係からN極性GaN成長となることから、従来の成長方法ではその制御が難しく、N極性GaN成長が支配的となるトリハライド気相成長(THVPE)法を導入することとした。現有のMOVPE成長装置に三塩化ガリウム固体原料供給系を付加し、NH3と反応させることでN極性GaNを成長できるようにした。初期検討として、サファイアおよびN極性GaN自立基板を種基板としてTHVPE法によりGaNの成長を行い、高温成長により劇的に結晶品質(転位密度、不純物濃度低減)の向上が可能であることを見出した。
|