研究課題/領域番号 |
25390066
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
金 秀光 名古屋大学, 高等研究院, 特任助教 (20594055)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スピン注入 / スピン情報 / 歪み超格子 |
研究概要 |
申請者は、スピントロニックス候補材料であるシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、グラファイト、グラフェンなどでの、スピン偏極電子の注入、輸送、緩和などの現象を徹底的に調べ、最終的にスピンを融合させた新たな機能を持つデバイスの実現を目指す。 本研究の大事な一歩は、スピントロニックス候補材料にスピン偏極電子を注入することであり、申請者は光励起によるスピン偏極電子を注入する方法を提案した。 新型超格子構造の設計、特にSi基板と超格子構造の界面の結晶性は本研究の成否を左右する。Siの格子定数は5.4309 Åであり、III-V族半導体中のGaP(格子定数:5.4599)との格子不整合度が一番小さい。それで、本研究ではGaP系の材料系を用いることにする。価電子帯を分離するためには、超格子の井戸層に圧縮歪みを印加する必要があり、井戸層材料としてGaAsPを、障壁層はSiと格子不整合度が小さいGaPを用いる。高いスピン偏極電子を生成するためには、経験上、価電子帯の重い正孔ミニバンドと軽い正孔ミニバンドを80 meV以上の分離させる必要がある。Model-Solid理論とKronig-Pennyモデルを用いて、GaAsP/GaP超格子層の組成や周期を決めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成否を左右するのは、Si、Geなどの基板上に高品質の歪み超格子構造を作製することである。その大事な一歩としては、適切な材料系を選択し、具体的な組成、厚さを設計することである。 Siの格子定数は5.4309 Åであり、III-V族半導体中のGaP(格子定数:5.4599)との格子不整合度が一番小さい。それで、本研究ではGaP系の材料系を用いることにする。価電子帯を分離するためには、超格子の井戸層に圧縮歪みを印加する必要があり、井戸層材料としてGaAsPを、障壁層はSiと格子不整合度が小さいGaPを用いる。高いスピン偏極電子を生成するためには、経験上、価電子帯の重い正孔ミニバンドと軽い正孔ミニバンドを80 meV以上の分離させる必要がある。 大事な一歩である設計がおりましたので、順調に進むと思う。
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今後の研究の推進方策 |
その次のステップは、昨年度設計した超格子試料をSi、Ge基板上に作製することである。 試料作製はMOVPE法により行う。本研究で大事な一歩は、Si基板上に高品質のGaPの成長である。Si基板上にGaP層を成長し、X線回折法と原子間力顕微鏡などを用いて、GaP層の結晶性評価を行い、適切な成長圧力、成長温度、原料の供給量などを決定する。その後、Si基板GaP層上にGaAsP層を成長し、上と同様な評価を行い、最適な成長条件を決める。 最後に第1段階で設計されたGaAsP/GaP超格子構造をSi基板上に作製する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の試料作製は主にMOVPEで行う。一つの超格子フォトカソードを作製するためには、最適化の作製条件を探索も含めて、5~7回の成長が必要となる。これらに用いるP原料、Ga原料、In原料は非常に高価であり、年間の作製枚数を厳密に計算すると、年間100万円以上の費用が必要となる。また、キャリアに用いる高純度水素ガスと、用いる基板にも年間30万円以上の費用がかかる。 高純度有機原料TBP(50g)、半導体基板(20枚)、水素キャリアガス(20本)などを注文して、結晶成長を行う予定である。
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