研究課題/領域番号 |
25390071
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
尾沼 猛儀 東京工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10375420)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / 窒化ガリウムインジウム / 酸化ガリウム / ヘテロ構造 / 界面 / 時間分解フォトルミネセンス / 半導体光物性 / 偏光依存性 |
研究実績の概要 |
本研究では、窒化物半導体光・電子素子の特性を議論する上で、欠かすことのできない表面・界面における再結合過程に注目している。光学的特性評価法を主な調査手段として用い、発光効率向上に向けた設計指針を提案することを目指す。以下の4点を主な成果として挙げる。 ①高InNモル分率のGaInNは、赤色~赤外線領域の発光・光電素子への応用が期待される。しかし、その結晶成長は困難であり、実現には数多くの課題が残る。RF-MBE法により、p層、n層ともにGa0.82In0.18Nで成長されたLEDを試作し、その特性を評価した。PLとEL特性の違いから、高InNモル分率のGaInN実現に向けた課題を指摘した。 ②AlGaN/GaN系電子素子において、AlGaNの表面状態の制御は重要な課題である。そこで、AlOx薄膜の有無、成長条件の違いが、AlN/GaN ヘテロ構造の発光特性に与える影響を、PLと時間分解PL測定により調査した。その結果、2DEG関連の発光エネルギー、発光寿命の変化から、AlOx構造により表面状態のコントロールが可能であることが示唆された。 ③前年度に引き続き、酸化ガリウムの特性を調査した。同材料は新しいパワートランジスター用の材料として注目を集める。光学スペクトルの偏光依存性を調査し、価電子帯のバンドオーダリングやバンドギャップエネルギーを決定した。これらの結果は、単斜晶結晶を半導体として利用するための固体物理学の礎となるとともに、パワートランジスター材料としての酸化ガリウムの高いポテンシャルを示唆した。 ④分子プリカーサー法により製膜したGa-In-O薄膜を電極としたGaN MOS LEDを試作した。金を電極としたLEDも試作し特性を比較した。その結果、Ga-In-O薄膜は遠紫外線領域での透明導電膜用の材料として有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
GaInN p-n接合LEDやAlOx/AlN/GaNなど、RF-MBEによる結晶成長が行われ、それらの試料の評価を遂行することができた。また、クライオスタット一式を導入し、H25年度に導入した極低温冷凍機システムと組み合わせることで、液体ヘリウム温度から室温まで温度変化させた光学評価が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度に引き続き、酸化物/窒化物半導体界面が再結合過程に与える影響を調査する。試料はRF-MBE法により製作する。また酸化ガリウム系材料の製作および評価も進める。陽電子消滅測定を合わせ、点欠陥のレベルまで掘り下げた議論を行い、窒化物半導体発光素子のポテンシャルを最大限に引き出すための知見を得る。
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