研究課題
基盤研究(C)
本年度は、パルスレーザー堆積法を用いてリチウムイオン2次電池の活物質LiMn2O4(以下、LMO)ならびにLiCoO2(以下、LCO)のエピタキシャル薄膜を作製し、電気化学評価を行った。LMOの成膜では、MgAl2O4基板上に高酸素分圧条件下でLiMn2O4のエピタキシャル薄膜ができることを確認した。また、低酸素分圧条件では、LiMnO2ができることがわかった。一方、LCOの成膜では、Au(110)基板表面を、(1)真空中でスパッタ・アニール、(2)王水によりエッチング、の2通りの処理を施し用いた。Au (110)表面では、真空中でスパッタ&アニール処理を行うことによりmissing row構造と呼ばれる(2×1)再構成表面が形成される。XRD測定では、基板のAu(110)ピークに加えてLCO(104)ピークが確認でき、c軸が傾いたLCOエピタキシャル薄膜が形成されることが分かった。また、王水エッチング処理を施した基板では、LCO(110)ピークを観測することができ、2つの異なる表面処理方法により、配向の異なるLCOエピタキシャル薄膜が得られることが分かった。さらに、配向の異なる2つのLCOエピタキシャル薄膜についてCyclic Voltammetry測定により電気化学評価を行った。(104)配向膜では、4.0 V、4.1 V、4.2 VにおいてLCOへのリチウムイオンの脱離を示すピークが観測された。一方、(110)配向膜では、上記に加えて、より低電圧側の3.9 Vにも反応ピークが観測された。LCOでは、リチウムイオンの挿入脱離に伴ってLCOの収縮膨張が起こることが知られており、上記の結果は、結晶にかかるストレスが電池の反応電位に影響を与えることを示唆している。
1: 当初の計画以上に進展している
LCOならびにLMOのエピタキシャル薄膜作製に成功した。また、配向の異なるエピタキシャル薄膜で異なる電気化学特性が得られることが明らかになったから。
全固体薄膜電池を作成するために、固体電解質薄膜の作製に取り組む。Li3PO4あるいはLiPON薄膜に関しては、イオン伝導を示す薄膜作製が可能となっているが、今後は活物質薄膜上への成膜に関して検討を行う。また結晶性の固体電解質としてLLTOに着目し成膜条件の検討を行う予定である。LLTOはPLDを用いた成膜において、Liが欠損し良好なイオン伝導を示す薄膜を得ることが難しい。今後はLi欠損を減らす工夫をし、全固体薄膜電池の作製とその電気化学評価を行う予定である。
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Acta Materialia
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http://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/jp/news/press/2013/20130711_000395.html