研究課題/領域番号 |
25390072
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白木 将 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 講師 (80342799)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リチウムイオン2次電池 / エピタキシャル薄膜 / パルスレーザー堆積法 |
研究実績の概要 |
本年度は、パルスレーザー堆積法を用いてリチウムイオン2次電池の活物質LiCoO2(以下、LCO)ならびにLiTi2O4、Li4Ti5O12(以下、LTO124、lTO4512)のエピタキシャル薄膜を作製し、その結晶配向制御と電気化学評価を行った。また、真空中で全固体薄膜電池を作製し、電極/電解質界面のイオン伝導性を評価した。 LCOの成膜では、Pt(110)基板表面を、スパッタ・アニール、および化学エッチングの2通りの処理を施し用いた。Pt(110)表面では、真空中でスパッタ&アニール処理を行うことにより(2×1)再構成表面が形成され、その基板上ではc軸が傾いた(104)配向LCOエピタキシャル薄膜が形成されることが分かった。また、王水エッチング処理を施した基板では、c軸が基板と平行な(110)配向のLCOエピタキシャル薄膜を作製することができ、2つの異なる表面処理方法により、配向の異なるLCOエピタキシャル薄膜が得られることが分かった。さらに、電気化学評価を行ったところ、 (104)配向膜に比べて、 (110)配向膜では、非常に安定なLiイオンの挿入脱離反応が起こることが分かった。 一方、LTOの成膜では、PLDによる成膜中の酸素分圧の調整により、低酸素分圧ではLTO124、高酸素分圧でLTO4512が形成されることが分かり、同じ組成のターゲットから異なる組成のエピタキシャル薄膜を作製することに成功した。また、その電気化学評価を行い、非常に安定な充放電反応が起こることを確認した。 また、LCOエピタキシャル薄膜の上に、固体電解質とLiの薄膜を積層し、全固体薄膜電池を作製して、その電気化学評価を行った。世界で初めて、エピタキシャル薄膜を用いた全固体薄膜電池の作製と電池動作の確認に成功し、さらにインピーダンス測定により、電極/電解質界面において非常に低い界面抵抗を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
LCOの表面構造の違いにより、液体電解質を用いた場合の反応表面の安定性に違いが生じることを明らかにした。また、世界で初めて、エピタキシャル薄膜を用いた全固体薄膜電池の作製と電池動作の確認に成功したこと。さらには、固体電解質薄膜の作製方法によって、電極/電解質界面におけるイオン伝導性が大きく異なることを証明した。これにより、これまで全固体電池実現化の大きな障壁となっていた固体の電極/電解質界面における大きな界面抵抗が、その作製プロセスにより改善可能であることが示され、全固体電池の開発指針を示すことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
固体電解質/電極界面において、非常に小さな界面抵抗を達成することができた。しかしながら、そのような低抵抗を示す界面がどのような構造を示し、また界面近傍においてどのようなLiイオン分布が形成されているのか等、不明な点が多い。今後は、透過電子顕微鏡、X線CTR散乱やb-NMR測定において、界面構造解析とリチウムイオンの濃度分布測定を行う。 また、より高性能なリチウムイオン電池の開発を念頭に、LiNi0.5Mn1.5O4などの高電位正極と電解質界面のイオン伝導性評価を行う。LCOを用いた実験でのノウハウを活かし、全固体電池の作製と界面抵抗評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、全固体電池の作製と電極/電解質界面抵抗の評価に成功した。低い界面抵抗を得るために、LCO/LiPONの組み合わせに焦点を合わせ、成膜時の実験条件を丹念に調べことに注力を注いだため、当初予定していたLCO/LiPON以外の組み合わせでは測定を実施しなかった。その結果、固体電解質の作製プロセスにより、界面抵抗が大きく変化することを見出し、次年度以降の実験を確実に進めるための準備を整えたから。
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次年度使用額の使用計画 |
透過電子顕微鏡、X線CTR散乱やb-NMR測定において、界面構造解析とリチウムイオンの濃度分布測定を行う。 また、より高性能なリチウムイオン電池の開発を念頭に、LiNi0.5Mn1.5O4などの高電位正極と電解質界面のイオン伝導性評価を行う。
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