研究課題/領域番号 |
25390074
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
近藤 剛弘 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70373305)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / 走査プローブ顕微鏡 |
研究概要 |
本年度は計画に基づき,無磁場下でのランダウ準位発生の物理的要因の絞り込みを試みました.すなわち様々な物理的要因のいずれが最も発生する擬磁場の大きさや広がりに大きな影響を及ぼしているのかを極低温走査トンネル分光計測の解析から絞り込むことに取り組みました.この結果,窒素ドープグラファイトにおいても特定の条件下において無磁場下でランダウ準位が生成していることを明らかにしました.これは,ランダウ準位が無磁場下で発生する系として我々がこれまでに見出してきた「カリウムを部分的にインターカレートしたグラファイト」とは全く異なるシステムです。カリウムの系と同様に今回の場合も表面のあらゆる場所でランダウ準位が発生しているわけではなく,特定の場所で発生していることがわかりました.一方,走査トンネル分光スペクトル解析から見積もられる擬磁場の大きさはカリウムの系の場合のほうが窒素の系の場合よりも約3倍程度強い大きさであることがわかりました.さらに窒素の系ではバイレイヤーグラフェンと呼ばれる2枚のグラフェンで構成される物質に磁場を印加した場合に出現するランダウ準位と同様のランダウ準位が多くの場合に出現していることがわかりました.現在これらの解析を続け,統一的に解釈が可能な発生メカニズムの解明に取り組んでいます.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに見出してきた「カリウムを部分的にインターカレートしたグラファイト」とは異なる異種元素ドープグラファイトにおいて,無磁場下でランダウ準位が発生する系が存在することが分かったという点で大きな進展がありました.目的とするメカニズムの解明には至ってはいないものの解析結果が揃ってきており大きな前進をしています。外部磁場の制御など実験の方の進展は遅れているため,全体としては「おおむね順調に進展している」としました。
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今後の研究の推進方策 |
カリウムをドープしたグラファイトと窒素をドープしたグラファイトの二つの系でランダウ準位が発生する実験結果を得ているため,これらの実験解析を引き続き続けてどのようなメカニズムでランダウ準位が発生するかを突き止めるとともに,自在にこれらの準位の発生を制御する方法を開発することを推し進めます.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初平成25年度に導入を予定していた外部磁場発生器に関して,装置の仕様と設計の詰めに予想以上に時間がかかり来年度以降に導入するように予定を変更したため未使用額が生じた。また現在,実験の解析結果より外部磁場発生器を導入するよりも積極的に異種元素ドープグラファイトの物性解析を行う方が目的とする擬磁場発生のメカニズム解明に資する可能性があり再検討しているところである。 研究目的を達成するための研究計画に沿う形で且つ、研究の進展に応じ,最適な使用用途を判断して使用する予定である。すなわち外部磁場発生器の導入と異種元素ドープグラファイト解析の加速化の効率のバランスを考えて最も有効な用途を判断して使用する予定である。
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