研究課題/領域番号 |
25390078
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川崎 忠寛 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10372533)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 金 / 触媒 / 反応その場観察 / 環境電子顕微鏡 / ストロボ観察 |
研究概要 |
本研究の目的は、電子線照射の影響が除去可能な「ストロボ環境電子顕微鏡システム」を新規開発し、金ナノ粒子触媒の「ナノ反応場」を直視解析・特定することである。 本年度は、金ナノ触媒の反応場特定を目指して、プロピレンの選択酸化反応のガス中電子顕微鏡その場観察を試みた。本触媒では特定のヘテロ構造(金とアナターゼ構造の酸化チタン)を作ることで、プロピレンと酸素の反応でプロピレン・オキサイドを一段合成する事が可能である。このプロピレン・オキサイドはポリウレタンの原料で、工業的にも重要な合成反応のひとつであり、本触媒反応の解析は学術的のみならず産業的にも意義が深いと言える。 プロピレン・オキサイドは蒸気圧が比較的低く、室温・大気圧下では液体であることに我々は注目した。液体の場合、ガス分子よりも密度が高いため、電子顕微鏡内でも容易に像コントラストが得られる。これを利用し、電子顕微鏡内で上記反応のその場観察を行いプロピレン・オキサイドの生成を動的に捉えることが出来れば、反応が起こっている場を特定できるはずだと考えた。 これを実現するため、大気圧までの触媒反応ガスを導入できる環境セル電子顕微鏡を改良し、複数のガス種を混合導入できるシステム、および反応後ガスの質量分析が出来るシステムを追加導入した。本装置を用いて実験を行った結果、約0.5気圧のプロピレンおよび酸素混合ガス雰囲気下において、金ナノ粒子と担体である酸化チタン(アナターゼ構造)の接合界面周囲に、反応生成物(プロピレンオキサイドと考えられる)が発生する様子をリアルタイムで観察する事に成功した。これにより、金/担体の接合界面こそが本触媒の反応場であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、本研究の目的は、電子線照射の影響が除去可能な「ストロボ環境電子顕微鏡システム」を開発し、金ナノ粒子触媒の「ナノ反応場」を直視解析・特定することである。 このうち、観察時の電子線照射の影響をなくすためのストロボ観察システムについては、現在のところ概念設計の段階で実機の作製には至っていない。しかし、主眼である金ナノ粒子触媒のナノ反応場の直視解析については、非常に重要な知見を得ることに成功しており、その目的を達している。装置開発についても、H26年度開始時に製作に着手することが可能であり、当初予定とは順序が変わっているものの研究計画全体としては順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
主要な応用目的については、前述の通り、おおまかに目途は立っている。 本年度以降は、新規装置開発に注力する予定である。 具体的には、(1)パルスガス発生・制御装置、(2)直噴ガスノズル、(3)急速排気系、(4)電子線用の高速ブランキング偏向器とその制御系、(5)上記(1)と(4)およびCCDカメラの同期制御システム、の開発を行う。 このうち、(4)と(5)については既に先行開発があるため、それを参考に実機製作を進める。(1)~(3)についても、概念設計は終了しているため、早急に図面作成・実機の部品製作を行うことができる。その後、実機組立・動作検証・必要であれば改良・改造を行い当初予定の性能を得るべく開発を鋭意推進する。
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