研究課題/領域番号 |
25390078
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
川崎 忠寛 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (10372533)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境電子顕微鏡 / ナノ粒子触媒 / マルチスライス / 色収差 / ホローコーン照明 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ガス中反応を可視化する「ストロボ環境電子顕微鏡システム」を開発し、金ナノ粒子触媒の「ナノ反応場」を直視解析・特定することである。本年度は、要素技術開発を中心に研究を実施した。具体的な項目は以下の通りである。 1)ガス液雰囲気下における結像シミュレータの開発。2)ホローコーン照明TEM法の適用条件の検討。3)加速電圧の大きなTEM(300kV ← 従来は200kV)への適用改良。 1)は、各種ガス液条件下に於いて得られるであろうTEM像の分解能を解析することで、要求分解能を満たすための実験条件を事前検討することを目的とした。試料周囲の電子線の伝搬はマルチスライス法で計算し、結像系での影響はフリーウェアのソフト(E. J. Kirkland image)を用いて解析した。それにより、ガス分子(液体分子)量とTEM像分解能との関係を明らかにした。 2)は、ガス液環境下観察において分解能を劣化させる主要因と考えられる色収差を低減する方法として、ホローコーン照明法と呼ばれる手法の適用検討を行った。本研究では、結像シミュレーションを行うことで、同手法を適用する際に要求される装置条件を明らかにした。その結果、これまで観察に用いてきたTEM装置の場合、熱電子放出電子銃を用いているため、その効果は大きくないことが分かった。本手法を実施するには電界放出電子銃を搭載したTEMを用いることが重要であり、次年度での実施を検討することとした。 3)では、従前の装置よりも高分解能・高SN比の像を得るために、加速電圧の大きなTEM(300kV;日立ハイテク製H9500 ← 従前は200kV-TEM)を用いて、金ナノ触媒のプロピレン酸化反応その場観察を行うべく、装置の適用改良を行った。特に、試料ホルダをガス導入・高分解能観察対応に改造を行い、次年度からの観察が可能な状況を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、本研究の目的は、電子線照射の影響が除去可能な「ストロボ環境電子顕微鏡システム」を開発し、金ナノ粒子触媒の「ナノ反応場」を直視解析・特定することである。 これまでに本研究の主目的である”金ナノ粒子触媒のナノ反応場”を特定することに成功しており、研究全体での目的は達せられていると考えている。 一方で、これまで観察された像の分解能・SN比は良いとは言いがたい。その点を改善するための各種手法の検討を本年度に実施し、上述の通り成果を得ている。これに基づいて次年度以降の装置開発・触媒その場観察につなげることで、さらなる飛躍が期待できる。以上のことから、研究計画全体としては順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の当初目的については、前述の通り、ほぼ達成できている。 次年度以降は、本年度の検討結果で得られた成果に基づき、各種装置開発・応用研究を推進する予定である。 具体的には、ホローコーン照明TEM法での像観察、および300kV-TEMでのガス中反応その場観察である。 また次年度は、本研究の最終年度であるため、成果発表および論文投稿にも力を入れ、得られた成果を世に出すことにも注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に購入した消耗品の一部が、当初予定していた価格より安価に入手できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品費として繰り越し、必要部材の購入に有効活用する。
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