研究実績の概要 |
・最終年度に実施した研究の成果 本研究中に電荷ベースの量子ビットよりも好ましいことが判明したrf-SQUID量子ビットは、荷電粒子光学応用では磁束量子分異なる磁束の重ね合わせを保持する必要がある。しかし、そのためにはrf-SQUIDデバイス自体が非常に大きくなるか、あるいは含まれているジョセフソン接合の臨界電流が非常に大きくなる必要がある。これは、例えば非常に精密なバイアス磁場のコントロールを要求する。このような問題点が出現したため、解決するためのデバイス設計を理論的に研究した。具体的には、量子性を維持し、しかし保持磁束の小さなrf-SQUIDを複数個準備し、これらが協同的に動作して全体としてひとつの量子ビットとするアイデアを検討した。これは複数個の量子力学系が相互作用しながら動作する量子多体系であるために、デバイスの動作分析は複雑高度にならざるを得ない。私は過去の研究により得られている横磁場イジング系やサインゴルドン場の知見を応用し、目的とするデバイス特性が得られるであろう理論的証拠および、おおまかなデバイス設計指針を得た。これは、多体系物理学の高度な知見が、現実の装置設計に応用される最初の例の一つであると思われる。本結果は現在査読中であるが、プレプリントを Hiroshi Okamoto, A Qubit Design Based on Many-Body Physics for Charged Particle Optics, arXiv:1608.02363 [quant-ph] として公開中である。ただし大幅改訂により題名が変更される可能性が高い。 ・研究期間全体を通じて実施した研究の成果 磁気的量子ビットに変更したため、電子ミラーを使う当初予定と大きく異なる道筋となったが、磁気的量子ビットの設計を提案し発展させながら、実験的インフラの整備を進めることができた。
|