研究課題/領域番号 |
25390084
|
研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
南 内嗣 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70113032)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 透明導電膜 / ZnO / 表面テクスチャー / 薄膜太陽電池 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究の第二段階として、より低コストでテクスチャー構造を有するZnO系透明導電膜を作製するために、化学的エッチング法を使用せずに、成膜時に直接テクスチャー構造を作製する技術を開発した。具体的には以下の研究開発項目を実施した。 ①テクスチャー構造(形状や大きさ等)を制御したZnO系透明導電膜の直接形成技術の確立。成膜時に直接表面テクスチャの形状を制御しつつZnO系透明導電膜を形成する技術を確立できた。また、南らが開発した高周波重畳直流マグネトロンスパッタ成膜時の成膜条件の精密な制御及び使用するターゲット材料の最適化により入射光の反射・屈折の制御等による光閉じ込め効果の高度化を実施した。その結果、広範な波長領域で高いヘイズ率(光の散乱度合い)及び大きな屈折角度を実現できた。
② テクスチャー、エッチング併用膜成膜技術の確立。第一段階成膜として、テクスチャー構造(形状や大きさ等)を制御したZnO系透明導電膜をガラス基板上に形成した後、エッチング処理を施すことにより、入射光の反射・屈折の制御等による光閉じ込め効果のさらなる高度化を実現できた。特に短波長領域においては、ほぼ100%のヘイズ率を有するZnO系透明導電膜を実現できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画した①テクスチャー構造(形状や大きさ等)を制御したZnO系透明導電膜の直接形成技術の確立。及び② テクスチャー、エッチング併用膜成膜技術の確立。の全ての研究開発項目に対して、一定の成果が得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究の最終段階として、より高変換効率な薄膜太陽電池を実現するために、透明導電膜の膜厚、キャリア密度を制御しつつ、膜の反射や吸収の低減と良好な光散乱を両立するテクスチャー構造を有するZnO系透明導電膜を作製する技術を開発する。具体的には以下の研究開発項目を実施する。 ① 透明導電膜を光が通過する際に、透明電極層での吸収による損失を可能な限り低減するために、特に膜厚の薄いZnO系透明導電膜への表面テクスチャー構造の形成を目的として、新たにバッファレイヤーを挿入する2段階成膜技術を開発し、膜厚の薄い膜でも厚い膜に匹敵する高品質ZnO系透明導電膜の成膜技術を確立する。2段階成膜には、直流マグネトロンスパッタ法、高周波マグネトロンスパッタ法及び高周波重畳直流マグネトロンスパッタ法等の各種スパッタ成膜技術を駆使して、薄い膜厚でも優れた結晶学的特性を実現するために最適なバッファレイヤー成膜条件およびそれに続く2段階成膜条件を明らかにする。 ②上記①で確立した2段階成膜技術により作成したZnO系透明導電膜に化学的エッチング技術により表面テクスチャー構造を形成する技術を開発し、テクスチャー構造を制御するためのエッチング温度、エッチング時間、最適エッチャント等の各種最適エッチング条件を明らかにする。 ③上記研究開発項目①~③の実施と平行して、作成したZnO系透明導電膜のテクスチャー構造の形状、垂直透過率、拡散透過率、ヘイズ率及び光散乱角等の各種光学的特性とOut-of plane In-plane X線回折法を駆使して膜の結晶学的特性を総合的且つ詳細に検討し、ZnO系透明導電膜のテクスチャー構造を決定するメカニズムを解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費において、平成26年度の使用額が若干少なかったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度消耗品費として使用予定
|