研究実績の概要 |
本年度は、研究の最終段階として、より高変換効率な薄膜太陽電池を実現するために、透明導電膜の膜厚、キャリア密度を制御しつつ、膜の反射や吸収の低減と良好な光散乱を両立するテクスチャー構造を有するZnO系透明導電膜を作製する技術を開発した。具体的には以下の研究開発項目を実施した。 ① 透明導電膜を光が通過する際に、透明電極層での吸収による損失を可能な限り低減するために、特に膜厚の薄いZnO系透明導電膜への表面テクスチャー構造の形成を目的として、新たにバッファレイヤーを挿入する2段階成膜技術を開発し、膜厚の薄い膜でも厚い膜に匹敵する高品質ZnO系透明導電膜の成膜技術を確立した。2段階成膜には、直流マグネトロンスパッタ法、高周波マグネトロンスパッタ法及び高周波重畳直流マグネトロンスパッタ法等の各種スパッタ成膜技術を採用して、薄い膜厚でも優れた結晶学的特性を実現するために最適なバッファレイヤー成膜条件では低ガス圧、低基板温度およびそれに続く2段階成膜では、高ガス圧(12Pa),高基板温度(350℃)等の最適製膜条件を明らかにした。 ②上記①で確立した2段階成膜技術により作成したZnO系透明導電膜に化学的エッチング技術により表面テクスチャー構造を形成する技術を開発し、テクスチャー構造を制御するためのエッチング温度、エッチング時間、最適エッチャント等の各種最適エッチング条件を明らかした。 ③上記研究開発項目①~③の実施と平行して、作成したZnO系透明導電膜のテクスチャー構造の形状、垂直透過率、拡散透過率、ヘイズ率及び光散乱角等の各種光学的特性とOut-of plane In-plane X線回折法により膜の結晶学的特性を総合的且つ詳細に検討し、ZnO系透明導電膜のテクスチャー構造を決定するメカニズムを明らかにできた。
|