研究課題/領域番号 |
25390088
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
豊田 光紀 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40375168)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 軟X線 / 顕微鏡 / 結像論 / フレネル数 |
研究実績の概要 |
波長3-30nm程度の軟X線領域において、生体や磁性材料などナノ構造が動的に変化する試料をCCD検出器(画素径10μm)で、実時間観察するには、対物鏡の倍率を大幅に向上する必要がある。研究代表者は、2面の多層膜ミラーで構成したSchwarzschild光学系に凹面鏡を付加した2段結像による超高倍率対物鏡を独自に考案した。この新型対物鏡では、高倍率(x1400)に加え、軸外収差も補正できる。このため、直径160μmの広視野で、空間分解能30nmのビデオ観測が期待できる。研究代表者は、上述した高倍率対物鏡の開発の過程で、その結像特性が従来の低倍率光学系と異なることを見出し、その原因が結像の記述に広く用いられるフーリエ結像論における平面波近似の破綻にあることを見出した。そのため、本研究では、顕微鏡で得られる軟X線像を正しく解釈するため、高倍率対物鏡の結像特性を新たに記述することを目的とする。これまで、25年度に、高倍率対物鏡の結像特性を実験的に検証するための顕微鏡システム(テストベンチ)の構築を行った。26年度は、作製したテストベンチを用いて、種々のテストパターンを観察し、また、その実測値をもとに、結像特性の定式化を試みた。結像特性の定式化では、点物体が対物鏡の光軸近傍に存在する状況を仮定して、モデルを構築した。一般に、光学系の結像特性は、物体-光学系瞳、および、光学系瞳-像面の2回の回折積分を用いて定式化できる。検討の結果、①高倍率対物鏡では、物体-光学系瞳の回折では平面波近似が十分に成立するものの、光学系瞳-像面の回折では、フレネル数が1以下にまで減少し平面波近似が破綻すること、②光学系瞳-像面の回折積分を球面波展開により記述すれば、実験結果を概ね良好に再現すること、が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、高倍率対物鏡の結像特性を実験的に検証し、また、結像特性を定式化することを目的とする。26年度は、結像特性の実験的な検討と定式化が、概ね順調に進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、高倍率対物鏡の結像特性の定式化をさらに進める。これまでは、解析の簡単のため、点物体が対物鏡の光軸近傍に存在する状況を仮定した。高倍率対物鏡が広い視野を持つことを考慮すれば、物体が対物鏡の光軸から有限距離離れた場合も考慮する必要がある。テストベンチによる実験データの集積と平行して、高倍率対物鏡の結像特性を実用的な精度で近似できる解析モデルの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
高倍率対物鏡の結像特性の定式化では、近似表現に工夫により、研究開始時の想定と比べより簡便な表現で、結像特性を記述できることが新たに明らかとなった。このため、数値計算用のワークステーションの導入が不要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度には、結像実験用テストベンチの動作に必要となる(光学部品・機械部品)を消耗品として購入する。
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