研究課題
波長3-30nm程度の波長域で動作する軟X線顕微鏡において、生体、高分子や磁性材料などナノスケール構造が動的に変化する試料をCCD検出器でリアルタイム観察するには、顕微対物鏡に1000倍を超える高い結像倍率が求められる。代表者は、2面の多層膜ミラーからなる主光学系の像面近傍に、凹面多層膜ミラーを付加した2段拡大による高倍率光学系を独自に考案し、開発の過程で、高倍率光学系の結像特性が、従来の低倍率光学系と異なることを見出した。軟X線リアルタイム観察で得られる像を正しく解釈するには、高倍率光学系の結像特性を明らかにする必要がある。本課題では、高倍率光学系の特異な結像特性は、光学系射出瞳から像面へ光波が回折する際にフレネル数が減少し、平面波近似が破綻することが原因と考え、軟X線用の低フレネル数光学系の結像特性の定式化を目的に研究を行った。H26年度までに、フレネル数減少の効果が顕著となる像面側のデフォーカス特性のモデル構築を行い、射出瞳から像面へ回折を球面波で表現すれば、実験結果を良好に再現する事がわかった。一方で、試料には厚みがあり、観察される像は、光軸方向の厚みの範囲で得られる像の重ね合わせとなる。このためH27年度は、像解釈を行う上で重要となる、物体側のデフォーカス特性の解明を行った。実験により、物体側のデフォーカスでは、点像の中心強度は試料位置に対して偶関数的に対称に変化し、フレネル数の大きい通常の光学系と同じ振る舞いであることが分かった。最後に、物体側のデフォーカス特性の定式化を試みた、その結果、高倍率かつ低フレネル数光学系で生じるデフォーカス収差は、フレネル数の大きい低倍率光学系と同様な一方で、フレネル数の低下の影響は、検出器上に重畳する固定位相項にのみあらわれ、像の光強度分布には影響を与えないこと明らかとなった。
すべて 2015
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Advanced Optical Technologies
巻: 4 ページ: 339-346
10.1515/aot-2015-0020