研究課題/領域番号 |
25390090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
武田 光夫 宇都宮大学, オプティクス教育研究センター, 特任教授 (00114926)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統計光学 / 定常性 / エルゴード性 / コヒーレンス / アンサンブル平均 / デンマーク / ドイツ / 連合王国 |
研究概要 |
波動方程式の持つ「時間」と「空間」対称性に着目し,「アンサンブル平均」を「時間平均」ではなく「空間平均」で置き換えることにより,現在の「時間平均統計光学」と異なる「空間平均統計光学」の新体系を創成することを目指し,以下の研究を実施した. 【統計光学における時間と空間のアナロジー対応表の整備】 既に確立されている時間統計光学の知見を空間統計光学の構築に役立てるために,時間と空間のアナロジー対応表をつくり,空間統計光学の概念や定義などを時間統計光学と対比させて整理し,作業の指針を与える海図を構築した. 【光散乱場の空間的定常性のための物理条件の解明】 空間統計の定常性はアンサンブル平均を空間平均に置き換える際の要となるが,光源,光学系,イメージセンサのどのような物理条件がどのように空間統計の定常性に関係するのかは全く知られていなかった.今年度の研究で以下の各項を証明し,この問題への解を与えた.1)光源が広義の空間定常性を持ち,光学系がシフト不変性を持つ場合には観測面上の波動場も広義の空間定常性を持つ.2)空間定常性を持たないインコヒーレント光源からのフレネル回折場は,相関関数の(位相因子を除いた)絶対値が移動不変性を持つという意味で広義の準定常性を持つ.3)インコヒーレント光源であれば,光源自体が空間的に定常性を持たなくても,そのフーリエ回折場は位相を含めて広義の完全な空間定常性を持つ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に述べたような当初の研究計画を達成したほかに,偏光場に対する空間平均に基づくVan Cittert-Zernikeの定理を導き,その有効性を実験的により実証することができた(Opt. Lett. 2013, 11). また,散乱場の空間的定常性を利用した新しい応用として,拡散板の背後の物体の3次元映像化(Opt. Express 2014,3)やインコヒーレント名な自己発光3次元物体のスペクトル映像の再生(Opt. Lett. 2014,3)にも成功した.これらの成果は当初の予定を上回るものである.
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ海外研究協力者との国際共同研究が順調に進んでいるので,研究の推進方策に変更の必要はない. 今後も現在の体制を維持して,当初の計画にそって研究を推進していく方針である.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は理論面の研究に重点をおいて行なった.理論面の研究が予想を超えて大きく進展したので研究のエネルギーをそちらに集中させた.そのため,計算機実験のソフトなどの選択と物品購入を次年度に回したたので予算を次年度に繰り越すことになった. 繰り越した予算は,当初の計画通り,計算機ソフトウェアなどの物品の購入に当てる予定である.
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