研究実績の概要 |
今年度は、Ez成分を効率的に増強する金属ナノ構造体を作製し、その上にアゾ系ポリマーを塗布することで、プラズモン増強近接場光のEz成分のマッピングを試みた。金属ナノ構造として銀ナノチップ(四角錐)を集束イオンビーム加工によってガラス基板上に作製した。原子間力顕微鏡(AFM)による観察結果から、底辺の長さ100 nm、高さ35 nmであることが分かった。またデザイン通りの円錐構造ではなく、エッジがなまった構造になっていることが分かった。この構造の上に、アゾ系ポリマーであるpoly(Disperse Red 1 Methacrylate)をスピンコートした。スピンコート後のAFM測定から、アゾ系ポリマーの表面は、下部の銀ナノチップ構造を反映ぜず、フラットであることが確認できた。また銀ナノチップの頂上からのフィルム表面までの距離は10 nmであった。Ez成分を効率的に励起するため、フィルム表面の法線に対して80°の高入射角で波長532 nmの半導体レーザーをフィルムに照射した。入射光の偏光として、入射面と平行な直線偏光(P偏光)を用いた。照射光強度は73 mW/cm2、照射時間は250 sであった。誘起されたポリマー移動による凹凸をAFMで測定し結果、等方的にフィルムが凹み、その中心である銀ナノチップの頂点にわずかに突起が形成されていることが分かった。この突起の幅が銀ナノ構造の幅に比べて小さいことから、突起は銀ナノ構造の先端が剥き出ているのではなく、その上部に残ったアゾ系ポリマーであると考えられる。有限差分時間領域法で計算した各電場成分(Ex, Ey, Ez)の強度分布と比較した結果、フィルム面内方向には光誘起異方流動性による力によって銀ナノチップ構造の頂点を中心にして放射状に外向きの力が、垂直方向には光勾配力によってフィルムを凹ませる方向に力が働いたことが分かった。
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