1.前面側15%、裏面側95%の反射率構造を持つ長さ250μm、幅50μmの広ストライプ半導体レーザを用いたセルフポンプ型位相共役反射率の実測値は40%~80%にとどまっており、共振器自励発振の目安である100%を越える位相共役反射率を実現できていない。平面反射鏡の代わりにブレーズド回折格子とビームエクスパンダを組み合わせたθ=5°の斜めフィードバック実験により、素子モードと外部鏡モードを同時に単一化できることを見出し、現状のセルフポンプ型位相共役フィードバックで動作する単一外部共振器モードの発振スペクトル線幅を遅延自己ヘテロダイン法を用いて測定したところ、7km遅延ファイバ(分解能14kHz) を用いて210kHzのスペクトル線幅を実測した。この線幅は測定分解能よりも十分大きく、本研究で狙った輝線スペクトルに近い狭線幅に到達していないのは、セルフポンプ型の自励発振が実現されていないためと考えている。
2.位相共役反射率の構造定数依存性を検討するため、前面側4%、裏面側98%の反射率構造を持つ長さ2000μm、幅50μmの広ストライプ半導体レーザの位相共役反射率を実測すると、最適の斜めフィードバック角はθ=0.6°で、位相共役反射率も10%~20%程度まで減少した。これは、レーザ長の増加に伴って、両端面間でストライプ幅内を斜め方向に伝搬できる自然放出光の入射角度が減少すると共に、利得狭窄の効果で遠視野増の広がりが更に狭まるためである。
3.逆に、レーザ長をより短縮化し、ストライプ幅を100μmまで広げると、斜めフィードバック角θを大きく出来るためストライプ幅内に形成できる空間回折格子本数を倍増できることになり、自励発振に必要な位相共役反射率を実現できる見込みがある。その際、前面側反射率を0.1%程度まで抑圧して、共振器方向の通常のレーザ発振を抑圧することが望ましい。
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