研究課題/領域番号 |
25390099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
菊田 久雄 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10214743)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属ナノスリット / 光学フィルタ / 光共鳴 / メタマテリアル |
研究概要 |
光の波長より短い周期で構成される金属ナノスリット・アレイによって、透過波長が入射角度に依存しない光学フィルタを作製する。この光学フィルタは、プラズモン共鳴のような周期構造での電磁場共鳴を利用せず、金属スリットの厚み方向での共鳴現象を利用する新しいタイプのフィルタである。本研究では、ボトムアップ無電解メッキ法を用いて対称な2次元配列を構成することで、透過波長特性が偏光および入射角度に依存しない近赤外線用の光学フィルタを設計・試作する。 フィルタ機能を発現させるための微細構造の設計では、中心波長1.5umの特性をもつように、時間領域差分法による数値シミュレーションを繰り返すことで金属構造を決定した。この設計方法は、ピーク透過率やフィルタ半値幅を考慮しながらの設計には適していなかった。そこで、繰り返しの数値計算だけに頼らずに、見通しの良く構造を設計する方法を確立するために、厳密光波結合解析法(RCWA法)を使って金属微細構造がフィルタとして振る舞うための基本パラメータを算出する方法を考案した。これによりフィルタの透過波長の設定だけでなく、半値幅を同時に推定しながら素子設計が行えるようになった。 素子の作製においては、紫外線レーザを使った干渉露光で10mm角の領域に1次元周期の深溝構造を作製した。一方、ナノ・インプリント法による微細構造の作製技術を確立するために、電子線描画装置を利用して石英モールドを作製し、紫外線硬化樹脂を用いて微細構造を形成した。その他、深溝構造に金属を蒸着することで金属細線の2重格子を作製し、この構造内での光共鳴現象を利用した高感度屈折率センサーを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フィルタの設計は、中心波長1.の特性をもつように微細構造を設計することができた。この設計は数値シミュレーションを繰り返すことで行ったが、ピーク透過率やフィルタ半値幅を考慮しながらの設計には適していなかった。これに対し、新たに考案したパラメータ決定手法では、金属微細構造での光共振器としての基本パラメータを算出することによって、フィルタの透過波長だけでなく、ピーク透過率や半値幅を同時に推定しながら素子設計が行えるようになった。この成果は、当初計画どおりである。 一方、素子の作製においては、やや遅れている。紫外線レーザ干渉露光によって10mm角の領域に1次元周期の深溝構造を作製し、UV樹脂を使った光ナノ・インプリント法による微細構造の転写が可能になった。ただし、利用したUV樹脂が機械的に柔らかすぎでメッキ後の研磨加工に適していなかった。そのため、深溝構造に金属を充填して表面を研磨で平滑化したものが得られなかった。 その他、金属周期構造内での光共鳴を利用した高感度屈折率センサーを考案し、共鳴波長が屈折率に依存することで実験で示した。これは、金属構造を利用した光学フィルタの新しい応用の提案である。今後、インプリント法と組み合わせることで光ファイバー先端にセンサーを設けることも可能になり、新たな展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
光ナノインプリント法によって作製した樹脂の機械強度が不十分であった。UV樹脂の材料を変更し、研磨に耐える樹脂にすることで、金属スリット・アレイの微細構造を作製する。作製したスリット・アレイの光学特性を評価し、透過率が入射角度に依存しにくいことを実験で示す。また、フィルタの偏光依存性を無くす構造として、クロス格子の金属スリット・アレイを作製する。具体的には、2回の紫外線干渉露光と金属リフトオフ法によって製作する。 設計手法の確立においては、金属微細構造での光学パラメータを算出する方法を使って、狭帯域で偏光および入射角度に依存しない光学フィルタの設計を行う。 その他、金属周期構造内での光共鳴を利用した高感度屈折率センサーを、光インプリント法によって光アイバー先端に設ける手法について検討を行う。
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