研究課題/領域番号 |
25390102
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
石月 秀貴 分子科学研究所, 分子制御レーザー開発研究センター, 助教 (90390674)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 擬似位相整合 / 周期分極反転 / 波長変換 / ニオブ酸リチウム / タンタル酸リチウム / 超短パルス / 軸傾斜構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、実用的な超大口径の擬似位相整合(Quasi Phase Matching, QPM)波長変換デバイスの実現と、その超短パルス発生への適用のため、QPMデバイスの厚板および傾斜化と周期構造のチャープ化の検討などを行うことを目的としている。研究2年目である平成26年度は、以下に示すように結晶の欠陥を補う形での大口径QPMデバイスの検討、テラヘルツ検出素子などへの適用に関する検討などを実施した。 1 QPMデバイスで広く用いられ、本研究でも主材料としているMg添加ニオブ酸リチウム(MgLN)の結晶均一性の問題を確認し、この回避手段の提案・実験的確認を行った。これにより本研究の当初の目的である大口径QPMデバイス実現への障害を取り除くことができた。 2 QPM素子の大口径化検討として、従来の世界最大サイズである10mm厚を凌ぐ、12mm厚結晶への周期分極反転構造形成を実現した。この厚みのQPMデバイスでは、1Jを超えるパルスエネルギーを取り扱い可能であり、さらなる高エネルギー波長変換の実現が期待できる。 3 大口径QPMデバイスを幾つかの共同研究グループに提供した。その成果の一つとして、テラヘルツ波の検出において従来より大幅な検出感度向上を実現することができた。 これまでの検討結果をもとに研究最終年度である平成27年度では、素子評価用小型高出力短パルス光源の構築と、これを用いた大口径積層構造QPM素子の作成・評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の平成25年度において、主として利用する結晶であるMgLNの結晶均一性問題が明らかとなり、これを解決することに時間を要したため、平成26年度開始時点では計画が若干遅延していた。しかし結晶均一性問題の回避策を見いだし、これが大口径QPMデバイスにおいて回避できることを実験的に実証し、論文および学会発表という形で報告することができた。 この結晶問題回避策検討と並行して、傾斜構造やチャープ構造形成の実験的検討は進めることができた。その結果の一部として、共同研究グループに提供したデバイスによりテラヘルツ波の高感度検出が実現されるなど、順調に成果をあげることができた。 超短パルス光源を用いた大口径デバイスの評価に関しては、当初は市販光源を購入・利用する予定であった。しかしそれではパワー不足であり、かつ、独自開発による光源を作製する方が高出力を得られる見通しが立ったため、光源を独自開発することとした。このための必要部品の選定等に若干の時間を要したため、当初研究2年目の平成26年度中に予定していた光源の取得を完全達成することができなかった。しかし全部品の選定は既に完了しており、光源構築は次年度である平成27年の4月には完了する予定である。したがって、この件に関する研究遅延はほとんど無いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
大口径QPM素子の評価にあたっては、独自開発の高出力ピコ秒光源を用いた光パラメトリック発振/発生による光波長変換を実施し、その素子海溝内分布評価や波長変換スペクトル評価などにより、素子特性の評価を行う。励起光源に十分な強度があり、かつデバイスがその高強度光照射に耐える場合はできる限りシングルパス配置である光パラメトリック発生により評価を実施する。これは追加の赤外域ミラーが不要となるからである。スペクトルおよびビーム形状等の評価は、できる限り既存の設備を利用する。 上記の素子評価と並行して、外部の共同研究グループに対しての素子の提供による、大口径QPM素子の実用評価も引き続き検討する。これは実際の研究に適用することで、その問題点などを確認・改善するためである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では研究2年目に購入予定であった、素子評価用の短パルス光源について、出力などの性能向上のために自作することとした。そのための仕様策定と購入物品の選定に時間を要したため、研究2年目に導入を完了することができなかった。しかし必要物品の発注は2015年3月中に済んでおり、納品は2015年4月に成される予定であり、これによる光源構築も同月中に実施可能である。したがって、この計画遅延は大きな問題とはならないと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
理由の欄で述べたように、当初計画より性能の向上した超短パルス光源を利用するために、既製の光源でなく、より性能の高い光源を計画と同程度の予算範囲内で自作することとした。発注した物品も2015年4月には全て納品予定である。したがって、実質的に当初の研究計画に変更は無いと考えている。
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