研究課題/領域番号 |
25390103
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
長谷川 登 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究職 (50360409)
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研究分担者 |
錦野 将元 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (70370450)
石野 雅彦 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (80360410)
難波 愼一 広島大学, 工学研究院, 教授 (00343294)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フェムト秒レーザーアブレーション / 超高速現象の時間空間分解計測 / 軟X線プローブ計測 / 軟X線干渉計測 / 軟X線顕微鏡 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、平成25度に開発した「軟X線レーザープローブによる物質表面の時間空間分解計測システム」を用いて、複数の物質に対してフェムト秒レーザーアブレーション過程を観測し、それらの比較を行った。特筆すべきは、軟X線反射像計測におけるニュートンリングの観測に世界で初めて成功したことである。特に金をサンプルとした場合に顕著な結果が得られており、レーザー照射後200ピコ秒から800ピコ秒の長時間に渡ってニュートンリングが観測された。これは、アブレーション過程において、固体もしくは液体面の上方に薄膜が形成され、軟X線に対するビームスプリッターとして機能していることを意味している。このニュートンリングの輝度を解析することにより、極めて精度の高い薄膜(密度が固体の50%以上、厚さ10ナノメートル以下、面粗さ数ナノメートル以下)が得られていることが判明した。サンプルをプラチナ、もしくはタングステンとした場合には、ニュートンリングは、照射強度、時間帯ともに限定的な条件でのみ観測されており、また、薄膜の精度も金と比較して劣っている。更に、軟X線干渉計測による観測結果と比較することにより、金をサンプルとした場合において、薄膜がレーザー照射の約200ピコ秒後に固体面から剥離する様子を観測することにも成功している。薄膜の膨張速度はレーザーの照射強度に強く依存していることが実験により示されており、照射パターンを制御することで任意の形状の過渡的な軟X線光学素子の形成の可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、去年度に開発した「軟X線レーザープローブによる物質表面の時間空間分解計測システム」を用いて、フェムト秒レーザーアブレーション過程を複数の物質に対して観測することに成功しており、ほぼ計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、照射レーザーの空間プロファイルに対する薄膜の形状の変化を観測することで、新しい過渡的な光学素子の形成手段としてのフェムト秒レーザーアブレーション過程の可能性を調査する。更に理論シミュレーションとの詳細な比較を行うことで、フェムト秒レーザーアブレーション過程のメカニズムを議論する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、去年度に開発した「軟X線レーザープローブによる物質表面の時間空間分解計測システム」の改造に関わる諸費用を最小限に抑えつつ、十分な成果を得ることに成功した。今までに得られた結果を元に国内外の複数の理論研究者との議論を行うことが改めて必要であることが判明したので、それを行う為の予算として本年度の予算の一部を使用せず、次年度へ残すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度では、今までに得られた実験結果を理論計算と比較する為に、外部の理論研究者との打ち合わせを複数回に渡り行う必要が有る。本年度の余剰予算は、その旅費、及び外部への成果報告の為の予算として使用する予定である。
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