研究実績の概要 |
光と物質の相互作用における超高速ダイナミクスを調べる上で、超短パルス光源は必要不可欠なツールとなっている。特に、時間分解能及び計測速度向上の観点から、極短パルス性と高繰り返し性を兼ね備えた光源は有用である。さらに、低コスト・省エネ・高安定性を備えたファイバレーザーによる実現が望ましい。本研究では、異種フェムト秒ファイバレーザー光のコヒーレント合成による高繰返し極短パルス光源の実現をめざしている。 まず、波長1550 nmで動作するエルビウムファイバレーザー発振器を開発し、自己相似増幅法を用いた増幅器によりフェムト秒増幅パルス(パルス幅 41 fs)を発生させた。増幅器をパラレルに2本用意し、一方の出力光をファイバ型の延伸器でパルス幅を延伸した上で、エルビウムファイバ増幅器で増幅した後、パルス圧縮を行い、波長1550 nmにおいて、39 nJ, 300 fsのパルスを得た。一方、もう一つの分枝からの出力光を高非線形ファイバーに入射することにより、非線形効果による分散波発生を行い、波長1050 nmのパルスを得た。ファイバ型延伸器で、パルス幅を延伸したうえで、2段のイッテルビウムファイバレーザー増幅器により増幅し、パルス圧縮を行った。波長1050 nmにおいて、96 nJ, 290 fs のパルスが得られた。 以上により、1050 nmと1550 nmの2波長において同期したファイバレーザーベースのフェムト秒増幅パルスを発生するシステムを構築した。コヒーレント合成による極短パルス発生に用いることが可能である。このシステムは最後の回折格子圧縮器を除いて、すべてファイバー融着により構成されており、非常に安定性・保守性の高いシステムになっているのが特長である。
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