研究実績の概要 |
InSbOx薄膜はスパッタリング法により室温で成膜した。InSbOx薄膜を600℃まで加熱する過程において、波長405 nmにおける反射光強度は、一旦減少した後に上昇に転じ、元の反射光強度よりも増加する特徴があったことから、3値記録(元の反射率、減少時の反射率、増加時の反射率)の可能性が指摘された。この600℃加熱に伴う薄膜の物性変化について調べたが、X線回折測定から薄膜はアモルファス状態のままであり、またRBS及びXRF測定から酸素比xもほぼ変化はなかった。前記実験からは反射光強度が変化した理由が明らかでなく、それを用いた多値記録の検討は困難が予想されたことから、InSbOxを用いた別の多値記録をシミュレーションにより検討したところ、2つのInSbOx層の間に空隙層を設け、その空隙の厚みを変化させることで、前記のような3値記録は可能であるとの結果を得た。具体的には、ディスク基板/InSbOx 20 nm/ 空隙層 y nm/InSbOx 100 nmの3層構造において、基板側から波長405 nmのレーザ光が入射する場合、空隙層厚yが54 nm以下(以上)のときは、空隙層がないときに比べて反射率は減少(増加)した。空隙層は例えば、酸化白金など熱分解してガスを放出する材料を用いれば、レーザ光照射時に形成が見込める[1]。実験にて検証するため、静的環境下で405 nmレーザ光を集光して照射できる装置を組み上げた。[1] T. Shima et al., Jpn. J. Appl. Phys. 42(2003)3479.
|