研究課題/領域番号 |
25390107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石島 達夫 金沢大学, サステナブルエネルギー研究センター, 准教授 (00324450)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 反応性プラズマ / 大気圧プラズマ / プラズマ-液体相互作用 / 液中・液界面反応 / 化学プローブ / OHラジカル |
研究概要 |
大気圧下の非熱平衡プラズマは、固体表面への照射による表面改質以外に、溶液中の様々な化学反応を促進させるための道具として、様々な産業への応用が期待されている。しかし、大気圧非熱平衡プラズマの生成源は、動作ガス種、流量、照射距離、印加電力、電源周波数など多数のパラメータがある上に、プラズマを照射される液体側について溶媒の種類、濃度、混合量など多くのパラメータがある。従って、プラズマ-液体間の反応現象を理解するためには、基本的な知見を1つ1つ積み重ね学理を構築する必要があると考えられる。 本年度は、大気圧非熱平衡プラズマを溶液に照射した時に、溶液中に誘起される様々な化学反応性を解明することを目的として、放射線化学の分野において溶液中の活性種の挙動調査に利用されている化学プローブを用い、液中活性種の生成レートの調査を行った。 大気圧プラズマ照射により生成される活性種の1つに、反応性が極めて高いOHラジカルがある。そこでOHラジカルと選択的に反応するテレフタル酸(TA)を化学プローブとして用いた。溶液中のTAはOHと反応し2ヒドロキシルテレフタル酸(2HTA)を生成する。2HTAに紫外線を照射し発生する蛍光強度を計測することでOHラジカル量を相対的に評価を行った。 本診断法を低周波交流高電圧電源により生成するHeを動作ガスとする大気圧非平衡プラズマジェット(NAPPJ)を溶液に照射した時の化学反応性調査に適用した。溶液中に生成される2HTA濃度は、NAPPJ生成に用いる印加電圧の増加に従ってほぼ線形的に増加することが分かった。印加電圧増加につれてNAPPJの発生領域が伸長することから、NAPPJにより生成される反応種密度と溶液中に生成される化学種の生成レートに正の相関があることが示唆される。更に同じ実験系で液中細胞の生存率と2HTA生成レートにも正の相関があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大気圧プラズマの生成パラメータを変化させたときに、照射液体に生成される活性種の中で最も反応性の高いOHラジカルの生成レート変化を、提案する化学プローブ法により定量的に調査可能であることを明らかにし、さらに細胞に及ぼす影響についても調査し、正の相関性があることを明らかにした。これより、次年度以降に行う、プラズマ-液体相互作用に関する研究を深化させるための基盤となる診断手法と指標を得ることができたと判断したため。
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今後の研究の推進方策 |
大気圧プラズマ照射により、溶液中には様々な活性種が生成されると考えられる。プラズマ照射による溶液中の化学反応過程に重要な役割を果たす水和電子(eaq-)、および、生体組織とプラズマとの相互作用を理解する上で重要な役割を果たすと考えられるOH, NO・を検出する化学プローブを用いプラズマ誘起の活性種の解析と、プラズマ生成パラメータとの相関性を調査していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究開始前に行っていた予備実験より利用していた安価なプラズマ生成用電源を用いた研究が想定以上に進んでしまい、その研究を完結するために注力した結果、本研究予算により当初購入する予定であったプラズマ生成用の電源を年度内に使用する見込みが得られなかったため、発注を見送ったことが理由である。 初年度に得られた成果より、プラズマにより生成される気相中の活性種と液相中の活性種診断を併せて行うことが重要であることがわかった。気相診断には繰り返し計測が必要となるためパルストリガー付のプラズマ生成用電源を用い、気相診断も平行して行うことで研究を深化させる計画である。
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