酸素プラズマを照射した植物の種子を播種・栽培すると,プラズマ未照射の種子と比較して成長の速度が2倍程度向上する成長促進効果が得られる.本研究では,酸素プラズマ照射による植物の酸化ストレス応答反応に着目し,プラズマ照射からストレス応答を経て成長促進効果に至るプロセスを調べることにより,成長促進のメカニズムを明らかにすることを目的とした.以下の3項目を調べることにより,酸素プラズマ照射による植物の成長促進メカニズムをタンパク質レベルで解明した. 項目1:植物成長に影響を与えるプラズマのパラメータ(粒子種,粒子密度)の特定.平成25年度には,活性酸素種照射量と照射時間との積(ドーズ量)が植物の成長促進を制御するパラメータであることを明らかにした.活性酸素種の計測のためにケミカルインジケータを製作し活性酸素ドーズ量を簡易かつ正確に計測することに初めて成功した. 項目2:プラズマ照射による酸化ストレス転写因子活性化の確認と植物内酸化還元反応の特定.酸素プラズマ照射により抗酸化に関する遺伝子の発現が変化することをマイクロアレイ解析で明らかにした.植物内のチオール化合物量を計測した結果,酸素プラズマ照射によって増加しており,抗酸化遺伝子発現の結果と合致することが分かった. 項目3:プラズマ生成抗酸化物質による植物内からの余剰活性酸素の除去効果と細胞周期の加速の確認.植物内のチオール化合物量の増加とともに細胞内の余剰活性酸素量が減少することが分かった.その結果,細胞内に存在するRuBisCO等の光合成関係酵素が活性化することにより,炭素固定からエネルギー産生が促進され,最終的に細胞周期が加速されることが分かった. 以上より,活性酸素種による植物成長促進のメカニズムが初めて明らかとなった.
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