酸素ラジカル密度の絶対値を触媒プローブで空間分布計測を行い、電子温度や密度などのプラズマパラメータの空間分布と合わせて、処理機構の解明と最も効果的なプラズマ表面処理を行うための指針を提供する。様々なプラズマに対して触媒プローブを適用した場合にプローブ周囲のガス温度などの条件が大きく変化し、温度に敏感な触媒作用の発現に大きな変化が生じて、正確な触媒プローブ計測に懸念が生じる。そこでプローブ加熱用供給電力を変化させ、触媒作用を起こす白金部の温度を掃引し触媒プローブ計測を行う新たな“温度掃引型触媒プローブ法”を考案し、各種プラズマに適用した。 従来の電流加熱型触媒プローブ法に比較して、温度掃引型触媒プローブ法ではプローブ表面での酸素原子の再結合による供給エネルギーをより客観的に推定が可能となり、高信頼性の酸素原子ラジカル密度導出が可能となった。 温度掃引型触媒プローブ法を各種プラズマ装置に適用した。いずれの装置においても酸素原子ラジカル密度測定について妥当な測定結果を得ることができた。特に大気圧プラズマ装置においては、これを用いた親水化処理の結果と酸素原子ラジカル密度の関係を明確に示すことができ、実際の応用に重要なデータを提供できた。 さらに、触媒プローブの白金表面での酸素プラズマとの相互作用を調べる過程で、酸素プラズマ中のオゾンの金属表面での解離現象について重要な知見を得た。プラズマに晒されている金属表面でのオゾンの解離確率は、プラズマに晒されていない金属表面での解離確率に比較して、著しく大きいことである。プラズマに晒されていない金属表面は様々な大気中ガスが吸着した状態でオゾンと金属の直接的な反応が阻害される。一方、プラズマに晒された金属表面では絶え間ないイオン衝撃により金属表面の吸着物質が除去され、金属表面が露出しオゾンと直接的な反応が頻繁に起こるためと理解される。
|