研究課題
基盤研究(C)
超重元素である104番元素ラザホージウムの化学的性質を明らかにするために,周期表上の同族元素で化学的性質が似ていると予想されるジルコニウムおよびハフニウムとともに無機化合物のうち単純な構造で比較的揮発性の高い塩化物のガスクロマトグラフィを行うことを計画していた。ラザホージウムは加速器を用いた重イオン核反応によってのみごくわずかな生成率で合成でき,半減期が長くても1分程度であるため,化学実験には一度に1原子しか用いることができない。そこで,平成25年度は,核反応を起こす重イオンビーム照射設備から化学実験室までの迅速搬送,揮発性塩化物の生成および揮発性化合物の検出システムへの搬送について,効率向上を目指した装置改良および実験条件の最適化を行った。具体的には,比較的大電力な直流高圧パルス電源を購入し,核反応生成物を搬送するためのカーボンクラスタの生成量を増強したことと,塩化水素により揮発性の塩化物を精製させる際に副反応として酸素や水と不揮発性化合物を生成することを抑制するために,1000度に加熱できる活性炭ゲッターを作製した。また,研究を行っているなかで,ジルコニウムおよびハフニウムの塩化物が酸素との反応について,これまで考えられていた反応機構とは異なった反応機構によって反応が進むと考えられる現象を見出し,新たな研究課題の展開が期待されている。
2: おおむね順調に進展している
超重元素である104番元素ラザホージウムおよび105番元素ドブニウムの気相化学実験が本研究課題の最終目的であり,正確度および精密度ともに高い物理量の取得を目指している。そのためには,統計精度を向上させることが最優先の課題であり,平成25年度はほとんどそのための研究を行ってきた。その結果,今後研究を続けていく上でおおむね順調な結果が得られており,次の段階へと進む予定である。
平成26年度以降は,改良を行った気相化学実験装置を用いて,まずはジルコニウムおよびハフニウムの放射性トレーサーを用いた基礎実験を行い,装置の性能を確認する。特に,石英カラム表面との吸着に関する吸着エンタルピーをより正確に導出するため,天然放射壊変系列のひとつであるトリウム系列に属する212Biを利用した実験装置の較正法を開発,確立する。その後,実際に超重元素であるラザホージウムを対象とした気相化学実験を行い,同族元素であるジルコニウムおよびハフニウムと吸着エンタルピーおよび昇華エンタルピーの比較を行い,超重元素で顕著となる軌道電子に対する相対論的効果について定量的な議論を行う。また,同様の実験および考察を5族元素に属する超重元素である105番元素ドブニウムについても行う予定である。
当初購入を予定していた消耗品などの価格変動のため。少額であるためこの予算のみでの物品購入は考えておらず,次年度以降の予算に組み入れて適正に執行する。
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