研究課題/領域番号 |
25390125
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤乗 幸子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50197844)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 電子線 / パルスラジオリシス / 過渡吸収 / 過渡共鳴ラマン / 短寿命活性中間体 |
研究実績の概要 |
当該年度、ナノ空間への基質の包摂を試みた。高透過性・耐量子ビーム性・相分離高次構造を持つNafionの主鎖疎水性領域と側鎖末端親水性イオンクラスター領域の各ナノ空間に選択的に基質を包接させ、ナノ空間場の環境の違いよる基質の取り込みの違いを明らかにした。基質はチオアニソール誘導体について検討した。また各空間に基質の特性を反映した選択的包摂が観測された。昨年度立ち上げた薄膜パルスラジオリシス過渡吸収測定システムにより、ナノ空間内包摂基質の選択的量子ビーム誘起短寿命活性中間体を観測した。Nafion 量子ビーム誘起反応において、親水性イオンコア内では水を介する間接的一電子酸化反応が、疎水性コア内では主鎖のイオン化に由来する直接的一電子酸化反応が観測された。溶液中とは異なる反応性も観測された。ナノ反応場における選択的量子ビーム誘起反応機構を明らかにできた。 昨年度構築したパルスラジオリシス共鳴ラマン分光システムにより、各種溶液中における量子ビーム誘起短寿命活性中間体の振動分光を行った。各種溶液中いずれもシングルから100ショット程度の測定で非常に良好な結果が得られた。Nafion膜に包摂された基質のパルスラジオリシス共鳴ラマン分光を行った。基質一電子酸化反応中間体のみならずNafion膜に由来する量子ビーム誘起振動分光測定に成功した。 振動分光をより詳細に検討するため、理論計算ソフトを購入し振動構造の帰属を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルショット薄膜対応透過型パルスラジオリシスシステムによりナノ空間選択的包摂基質の各包摂部位における量子ビーム誘起活性中間体の観測に成功している。電子線のシングルショット照射により薄膜試料へのダメージも抑制され、再現性のよいデータが得られたいる。またパルスラジオリシス過渡ラマン分光においては、当初予定していた溶液中での測定のみならず、平成27年度予定していた薄膜中での量子ビーム誘起活性中間体の振動分光に成功した。しかし、ナノ反応場の耐量子ビーム性の検証実験であるγ線照射実験の遂行が遅れており、未だ実験が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ反応場耐量子ビーム性のまとめと実用化の検証を行う。反応場制御量子ビーム誘起有機汚染物質分解への実用化にむけてはビスフェノール水溶液の量子ビーム誘起反応効率を明らかする。さらに薄膜、ゼオライトなど各種材料中でのビスフェノールのナノ空間への包摂状態を明らかにする。ナノ空間包摂状態での量子ビーム誘起反応を検討し、反応場が及ぼす効果を明らかにする。パルスラジオリシス過渡ラマン分光により各反応場における活性中間体の分子構造を詳細に検討する。ナノ反応場の耐量子ビーム特性を明らかにする。当初の計画とおり遂行の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
耐量子ビーム実験に着手することができず、それらに必要な材料、試薬の物品購入を行わなかった。このため実支出物品費が申請額より低いものとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
ナノ空間を有する材料、包摂環境汚染物質、分光用セルの購入により、勢力的に研究を進めていき、反応場制御量子ビーム誘起有機汚染物質の実用化をめざす。
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