研究課題/領域番号 |
25390127
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
鎌田 雅夫 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 特命研究員 (60112538)
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研究分担者 |
高橋 和敏 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (30332183)
辻林 徹 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (50214771)
東 純平 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (40372768)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子凝縮相 / 亜硝酸ナトリウム / システイン / 共鳴光電子分光 / 放射光 |
研究概要 |
物質の持つ多様な機能性や緩和過程などを理解するには、基底占有状態の知見だけでは不十分であり、励起状態についての知見が不可欠である。本研究は、励起(非占有)電子状態の分析を目指し、その達成のために、①放射光とレーザーを組合わせた光電子分光法による、基底(占有)状態分析と励起(非占有)状態分析を同一試料ならびに同一条件下で実施する手法を確立するとともに、②その手法を適用して、次世代機能性物質として期待される分子性凝縮相(アミノ酸と亜硝酸塩)の占有電子状態ならびに非占有電子状態の分析を行い、手法の有効性を示すことを行い、③さらに、時間分解光電子測定により、励起状態の緩和ダイナミクスを解明し、手法の発展性を示すことを目的としている。 平成25年度は、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターにおいて佐賀大学シンクロトロン光応用研究センターのビームラインBL13(ナノスケール表面界面ダイナミクスビームライン)の軟X線と光電子分光システムを用いて、真空蒸着法で作成した亜硝酸ナトリウム薄膜についての放射光光電子分光による基底(占有)状態の測定と、Na-L,N-K,O-Kの各内殻吸収スペクトル測定および、それらの内殻吸収領域における価電子共鳴光電子分光による励起(非占有)状態の測定を行った。 実験結果から、亜硝酸ナトリウムが局所的な分子的描像と広い範囲でのバンド的性質の両面の特徴を有することが明らかとなった。また、データの定量的な分析により、励起状態のオージェ減衰過程の割合を導出することができた。これらの研究成果の一部について、本年度末の物理学会において、口頭発表を行った。 また、アミノ酸システインについては、内殻吸収分光測定を行い、励起状態の部分状態密度を明らかにすることができ、成果の一部を、12月の光物性研究会ならびに、1月の日本放射光学会でポスター発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成目標として掲げたものは以下の3点である。:①放射光とレーザーを組合わせた光電子分光法による、基底(占有)状態分析と励起(非占有)状態分析を同一試料ならびに同一条件下で実施する手法を確立するとともに、②その手法を適用して、次世代機能性物質として期待される分子性凝縮相(アミノ酸と亜硝酸塩)の占有電子状態ならびに非占有電子状態の分析を行い、手法の有効性を示すことを行い、③さらに、時間分解光電子測定により、励起状態の緩和ダイナミクスを解明し、手法の発展性を示すことを目的としている。 このうち、平成25年度においては、①は佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターにおいて佐賀大学シンクロトロン光応用研究センターのビームラインBL13の軟X線およびレーザーと光電子分光システムの整備として順調に進んでおり、共同研究者が研究会や学会等で報告している。②については、真空蒸着法で作成した亜硝酸ナトリウム薄膜についての放射光光電子分光による基底(占有)状態の測定と、Na-L,N-K,O-Kの各内殻吸収スペクトル測定および、それらの内殻吸収領域における価電子共鳴光電子分光による励起(非占有)状態の測定を行った。また、アミノ酸システインについての内殻吸収分光測定を行い、励起状態の部分状態密度を明らかにすることができた。これらの実験結果と解析結果についての成果の一部を、3月末の物理学会の口頭発表、および12月の光物性研究会ならびに1月の日本放射光学会のポスターとして、それぞれ発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も本研究の達成目標として掲げた以下の3点:①放射光とレーザーを組合わせた光電子分光法による、基底(占有)状態分析と励起(非占有)状態分析を同一試料ならびに同一条件下で実施する手法を確立するとともに、②その手法を適用して、次世代機能性物質として期待される分子性凝縮相(アミノ酸と亜硝酸塩)の占有電子状態ならびに非占有電子状態の分析を行い、手法の有効性を示すことを行い、③さらに、時間分解光電子測定により、励起状態の緩和ダイナミクスを解明し、手法の発展性を示すことを達成する、のために、当初予定通り、継続して研究活動を行う。 平成26年度は、なかでも、アミノ酸システインについての共鳴光電子分光測定と亜硝酸ナトリウムにおける時間分解光電子分光測定を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予算枠として確保していた学生謝金が、別予算での支援により執行したために当予算での謝金支出が生じなかった。国際会議での発表を開催国の事情により取りやめたことにより国外旅費が繰り越された。真空部品の再利用が可能となったために消耗品の支出が当初予定よりも抑えられた。 これらの事情により、25年度の支出額が計画を下回ったが、マシンタイムは予定通りに申請して実施することができており、研究執行上の不都合は生じていない。 研究計画は予定通り継続するとともに、繰越分は平成26年度と合わせて、今年度以降の研究実施に役立てる予定である。 夏ー秋、および冬の実験実施ならびにそれに向けた試料作成、データ解析などのための消耗品、学会発表経費などに充当する予定である。
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