研究課題/領域番号 |
25390127
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
鎌田 雅夫 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 特命研究員 (60112538)
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研究分担者 |
高橋 和敏 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (30332183)
辻林 徹 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (50214771)
東 純平 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (40372768)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子性凝縮体 / 軽元素内殻吸収 / 共鳴光電子 / 亜硝酸ナトリウム / システイン / アミノ酸の電子状態 / 占有電子状態 / 非占有電子状態 |
研究実績の概要 |
放射光を用いて、分子性イオン結晶である亜硝酸ナトリウムの内殻(Na, N, O)準位からの吸収スペクトルを測定して、励起状態の内、最低エネルギーの非占有状態が主として局在化した窒素と酸素の軌道から構成されており、ナトリウムの3s軌道はより高い励起状態に幅広く拡がって、窒素と酸素の高い励起状態と結合したエネルギーバンド構造を形成していることが実験データから明らかとなった。また、占有電子状態についても、内殻励起による共鳴光電子分光法を行い、価電子構造の共鳴増大を観測することに成功した。その実験結果は、窒素の局在化、酸素の拡がり、ナトリウムのわずかながらの幅広い寄与を示した。以上の結果から、分子性の特徴を保持しながら、イオン結晶としてのバンド性を有することが明らかとなった。さらに最低励起状態の局在状態から非局在状態への移動する寿命を内殻正孔時間との比較から見積もることができ、数十フェムト秒以上の長い間局在した状態を保持していることが明らかとなった。 アミノ酸の一種であり、硫黄を構成原子とするシステインについて、占有および非占有電子状態を光電子分光ならびに内殻吸収分光法により測定した。最高占有電子状態は硫黄の3sp状態から成り、最低非占有電子状態は酸素2p状態が主で、それに硫黄3spと炭素2p状態が混ざった状態であることが明らかとなった。また、共鳴光電子分光の結果から占有電子状態の価電子状態における硫黄3spや酸素2sp状態の位置が実験的にも明らかとなった。これらの結果は分子軌道計算の結果とも一致しており、統一した電子状態の理解が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に研究対象とした、分子性イオン結晶である亜硝酸ナトリウムとアミノ酸システインについての実験マシンタイムを配分していただき、内殻(Na, N, O)準位からの吸収スペクトルならびに共鳴光電子の測定を実施することができた。 得られた実験データから、励起状態の最低エネルギーの非占有状態の分析を行うことができ、また広いエネルギー範囲に渡るエネルギー状態を理解することができた。その結果は、バンド計算や分子軌道計算との比較も行うことができ、統一的な描像を描くことを可能とした。 さらに内殻励起状態が局在状態から非局在状態への移動する寿命を内殻正孔時間との比較から見積もることができ、数十フェムト秒以上の長い間局在した状態を保持していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
分子性凝縮体の励起状態のエネルギー状態分析が成功裏に進行しているので、今後はダイナミックスに興味を移して、光誘起現象や励起状態記録の保持などについての研究を推進する。 また、すでに得られている実験結果の発表ならびに論文出版を急ぎたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際会議への出席が都合でできなくなり、次年度に別の国際会議に招待講演を行うという変更があった。 論文投稿が予定より遅れて、次年度の4月に出版されることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
国外への旅費が円安で高くはなるが、是非招待講演を行いたい。論文掲載料も値上がりしているが成果発表として重要なので是非論文を出版したい。 最終年度に当たるので、まとめを急ぎたい。それに必要な記録媒体やワープロソフト、ノートパソコンの更新を行いたい。
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