(1)様々な水和率において水を吸着させたリボヌレアーゼAについて、タンパク質水和水の構造を示差走査熱量(DSC)測定およびX線回折により室温から180 Kまでの温度範囲で調べた。タンパク質の第1層の水は不凍水であり、第2層以降の水は過冷却状態にあることが明らかになった。さらに、室温から240 Kまでは温度低下によりこれら水和水の正四面体類似構造が強化されることが明らかになった。 (2)水を吸着させたリゾチームの中性子回折データについて解析を行った。解析方法の検証として、重水ならびに電解質重水溶液の測定結果に対して非弾性散乱補正ならびに逆フーリエ変換を行った。その結果、妥当な構造関数が得られることが明らかになった。しかし、水和タンパク質試料では軽水素原子による非弾性散乱効果が大きく、リゾチーム水和水の構造決定までには至らなかった。 (3)メソポーラスシリカにグリシンなどアミノ酸水溶液を閉じ込め、室温から180 K付近までの温度範囲で、DSC測定ならびにX線回折測定行った。グリシン分子は細孔壁付近に位置しているのに対して、アルギニン分子は細孔壁から離れて溶存していることが示された。細孔内での両者の水和構造の違いについて考察した。 (4)水構造に摂動を与える共溶媒としてアルキルアンモニウム系イオン液体を用いて、タンパク質の構造安定性に及ぼす影響について、主にX線小角散乱を用いて調べた。イオン液体の添加により、へリックス構造は強化されるが、完全なフォールディング状態にはならず、タンパク質の構造と溶媒中のナノドメイン構造との関連が示唆された。
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