研究課題/領域番号 |
25390131
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
森林 健悟 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (70354975)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 三体再結合 / 分子の分極 / 重粒子線照射 / 電場 |
研究概要 |
(I)重粒子線の水への照射の場合、生成する水分子イオンの電場により、二次電子が重粒子線の軌道付近に捕獲されるが、捕獲された二次電子衝突により水分子の電離や励起など様々な過程が起こる。その過程の1つに再結合が考えられるので、本年度は再結合の研究を行った。電子とイオンの間の再結合過程には、いくつかの種類があるが、電子温度、電子密度に関連しており、以前に開発したシミュレーションコードから電子密度、電子温度を計算し、照射後100フェムト秒までで起こる再結合は二つの電子とイオンが絡む三体再結合のみであることを明らかにした。そこで、我々のシミュレーションに三体再結合を導入し、シミュレーションコードを開発した。そのコードを用いて、三体再結合は重粒子線のエネルギーが低くなるほど、起こる時間がはやくなり、起こる量も増えることがわかった。重粒子線のエネルギーが3MeV/uのとき、(i)照射後、50フェムト秒以降に重粒子線の軌道付近で起こり始め、(ii)電子温度を上昇させ、(iii)動径線量を増加させる働きがあることを明らかにさせた。重粒子線のエネルギーが15 MeV/uのときは、再結合が起こり始める時間が遅く、照射後100 フェムト秒でも動径線量に影響はなかった。 (II)先程述べた水分子イオンの電場は、水分子を回転運動させる。この回転運動により水の誘電率、すなわち、二次電子に掛かる力が変化し、二次電子の運動が変化することが予測できる。そこで、水分子の回転運動を我々のシミュレーションに導入するため、シミュレーションコードの水分子に分極を持った酸素原子と水素原子の位置座標を与えた。分極の方向をランダムに取り扱うと二次電子の運動は、分極を考慮しない場合とほぼ同じになったが、すべての分極の方向を重粒子線の軌道に垂直な方向に取ると二次電子の軌道付近の捕獲確率が激減することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果は、日本物理学会で発表できた。また、三体再結合の研究のために見積もった電子温度、電子密度の結果は論文に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の三体再結合の成果は、論文にまとめる予定である。シミュレーションのモデル開発では、水分子の分極を取り扱うことができるようになったので、平成26年度は予定通り、水分子の回転運動に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年の旅費に使用。 旅費
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