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2014 年度 実施状況報告書

中性子散乱による高次多極子自由度がもたらす秩序メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 25390133
研究機関独立行政法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

山内 宏樹  独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (50367827)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード中性子散乱 / 八極子秩序 / 磁気秩序
研究実績の概要

多段相転移(T1 = 4.8 K, T2 = 7.0 K, T3 = 17.2 K)を示す正方晶希土類化合物NdB4において、高次多極子秩序の可能性が議論されている。マクロ物性測定、粉末中性子回折、平均場近似計算などの結果に基づいた考察から、高温中間相(II相: T2 < T < T3)を磁気八極子モーメントの自発秩序相とするアイデアが提唱されている。この推察を検証するためにJ-PARCのBL18(SENJU)において単結晶中性子回折実験を行い、磁気形状因子の波数依存性を求めた。
波数Qの増加とともに磁気形状因子f(Q)が減衰する磁気双極子の秩序に対して、磁気八極子秩序の場合、それとは明らかに異なり、Qの増加とともに零から増大し、あるQ以上で飽和するような振る舞いを示すことが知られている。実験の結果、高温中間相(II相)において、禁制反射位置(H 0 L) (H = 奇数)の磁気反射が高Q領域に向かって増大する傾向があることを見出した。しかし同時に、多重散乱の存在も判明し、それが常磁性状態(I相: T > T3)から最低温度までの全ての測定温度域に渡ること、かつ、その影響が高Q領域にまで及ぶことも分かった。結果として、本測定では多重散乱と高Q領域の微弱な磁気散乱信号の明確な分離が困難であり、NdB4における八極子秩序発現の真偽に対する結論を得るに至らなかった。
一方、高温中間相より低温で出現する2つの未知秩序相内(III相: T1 < T < T2, IV相: T < T1)において磁気衛星反射を観測し、逆格子空間のスライスマップから、それぞれの相においてq1 = (δ, δ, 0.4) (δ ~ 0.14)のインコメンシュレート磁気秩序、q2 = (0.2, 0, 0.4)のコメンシュレート磁気秩序が実現していることを新たに見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度に引き続き、国内の研究用原子炉JRR-3は、未だ中性子ビームの供給を停止しており、再稼働の見通しも示されていない。したがって、実施予定であったゲルマニウムモノクロメーター結晶のモザイク度の評価、集光機器へのモノクロ結晶の取付・調整作業、中性子導管内への導入テストが実現していない。
一方で、この新型ゲルマニウムモノクロメーターを用いて実施を予定していたNdB4の磁気形状因子測定については、パルス中性子源J-PARCのBL18(SENJU)を用いた代替実験で実現し、広いQ領域に渡る磁気散乱の測定データを得ることが出来たのは大きな収穫である。しかし、予想外の強い多重散乱による影響で八極子秩序発現の真偽について明快な結論を得るに至らなかったため、他の実験手法を用いて目的を達成する必要があると考えている。

今後の研究の推進方策

共鳴X線散乱などの他の実験手法を用いて、八極子秩序発現のアイデアを補強する実験事実の収得を目指す。その一つとして、NdB4における八極子秩序の可能性の拠り所となっている平均場近似計算の理論予測を補強するため、J-PARCもしくは海外の中性子散乱施設を用いて中性子非弾性散乱による結晶場励起スペクトルの観測を行い、予測精度の向上を目指す。

次年度使用額が生じた理由

研究用原子炉JRR-3の停止状態が長期化しており、中性子ビームを利用した具体的なテストができていない。したがって、製作予定の新型モノクロメーターに用いる完全結晶の補充枚数や集光機構の改良箇所などが確定できず、それらの費用を賄う他の予算枠組みの具体的な目処も立たないため、若干の予備費として次年度使用額相当を確保する必要があった。

次年度使用額の使用計画

完全結晶に熱間プレスを施し、モノクロメーターに適した反射率のモザイクを導入するホットプレス作業において、プレス条件の最適化の過程で破損し失われた結晶が複数枚存在するので、完全結晶の補充費用に充てる。また、中性子非弾性散乱実験に用いる粉末試料を新規合成する必要があり、その原材料の購入費用にも充てる予定である。

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公開日: 2016-05-27  

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