生きている細胞を蛍光顕微鏡と軟X線顕微鏡で同時に観察可能なハイブリッド顕微鏡の製作を行うとともに、新型試料ホルダーと組み合わせ、ハイブリッド顕微鏡として完成させた。これまでに実績のあるマウスの精巣ライディッヒ細胞を用いてハイブリッド顕微鏡による蛍光顕微鏡と軟X線顕微鏡による同時観察を実施することによりその性能試験を実施した。さらに、ハイブリッド顕微鏡の生命科学研究への活用の一例として、アポトーシスを起こした細胞核の構造変化を観察した。プログラムされた細胞死であるアポトーシスは生命体の生存にとって非常に重要な生命現象の一つであり、これまでの蛍光顕微鏡を用いた研究で、アポトーシスを起こした細胞核は、DNAが細胞核周辺に集まるリング形状、DNAの断片化に伴うネックレス形状、DNA凝縮、核崩壊という過程をたどることがわかってきているが、その詳細な構造変化は解明されてこなかった。開発したハイブリッド顕微鏡を活用し、蛍光顕微鏡と軟X線顕微鏡による同時観察を行うことによるこれまで明らかにされてこなかったアポトーシスによる細胞核の詳細な構造変化を観察することによりハイブリッド顕微鏡の有用性を実証した。また、開発したハイブリッド顕微鏡により生きている精巣ライディッヒ細胞を観察することにより、細胞核周辺に網の目状に分布するミトコンドリアの観察に成功するとともに、単一のミトコンドリアの構造の観察にも成功した。
|