研究課題/領域番号 |
25390136
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
武田 全康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, ユニット長 (70222099)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中性子小角散乱 / 永久磁石 / 内部構造 / 散乱パターン / 実空間像 |
研究概要 |
今年度は,J-PARCのハドロン事故の影響で,中性子小角散乱を行うことができなかったので,中性子小角散乱解析コードの開発とその評価を中心に研究を推進した.まず,基本方針として既存のコードの最適化と機能拡張を行った.具体的には並列計算の高速化,q領域を変えられる(小角散乱実験データに応じて,シミュレーション範囲を変えられる)機能の追加,レーベンバーグ - マルカート (LM) 最適化アルゴリズムの実装であるlevmarパッケージ最新版への対応,シミュレーションあるいは解析結果の表示方法の改善,極座標でのモデル構築ができるような改良などを行った. 5.0 × 5.0 × 5.0 立方マイクロmmのコンテナの中に,平均粒径値1.0-3.0マイクロメータ程度の正規分布あるいは対数正規分布をもつ焼結粒子が充填されているNd-Fe-B焼結磁石を模擬したモデルにおいて,計算の速さを評価したところ,上記コンテナを256 × 256 × 256,512 × 512 × 512, 1024 × 1024 × 1024のメッシュで切った場合でのそれぞれの計算時間は,約14秒,1分25秒,11分19秒であった.ただし,磁気成分は入れていない場合であり,その評価は次年度に行う.また,焼結粒の周りには,4 - 5 nmの厚さのNdリッチ相に対応する粒界相を仮定した.ただし,256 × 256 × 256のメッシュではメッシュが粗すぎて界面相を正しく評価できていないので,上記計算時間は参考値である.以上の結果を,日本物理学会第69回年次大会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
J-PARCのハドロン事故により,当該年度のビームタイムが極端に減ってしまったため,中性子小角散乱実験を実施することができなかった.また,解析コードの評価に慣れるまで時間がかかり,手間取ってしまったため当初の予定よりも進捗が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
時間がかかったものの,解析コードについては不十分なところや不具合の可能性があることろが明確になっているため,次年度早期に解析コードを完成を完成を目指すとともに,すでに測定済みのデータを使って,本解析コードにおより構築された実空間モデルによる小角散乱パターンと実際の測定パターンとの比較を試みる. 一方,研究用原子炉JRR-3が長期にわたり停止している影響もあり,J-PARCの中性子小角散乱装置の競争率が3倍近くになっている他,特別枠として重点課題利用 (元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>)によるNd-Fe-Bの研究が行われているため,非常に中性子小角散乱実験のビームタイムの確保が難しくなっている.そのため,測定データの収集については,元素戦略プロジェクトとの連携のもとで進めて行きたいと考えている(協力研究者となっている).
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画では,中性子小角散乱パターンの解析コードの開発が最も重要な鍵となるが,開発要素が多く,未知の部分も多く含まれている.そのため,見込み違いによるリスクを軽減するために,進捗状況を見ながら開発を進めて行く(分割発注する)ことにした.しかし,最初の解析コードの評価に時間を要し,2回目の発注を見送ることになったため,コード開発費に剰余金が生じた.また,計算性能によってメモリの増設も考慮に入れていたが,評価が十分でない時点での無駄な投資を避けるため,このメモリ増設費用も見送った. 現時点での解析コードの評価はほぼ終わっているため,最終仕様を固め,繰越金と合わせて解析コードの開発に支出する.場合によっては,次年度も分割発注を考えるが,予定通りの金額を使い切る予定である.
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