研究課題
基盤研究(C)
本研究では,Aサイト秩序型ペロブスカイトSr3RCo4O10.5(R=Y,ランタニド)を対象として,室温強磁性(フェリ磁性)体の秩序構造を調べ,高い強磁性転移温度を持つこの物質の理解に繋げることが目的である。2013年度の研究では,単結晶法を用いた酸素欠損の秩序-無秩序転移および強磁性転移の構造変化を捉えるため,放射光X線回折実験を実施した。電子秩序状態は,格子歪みや磁性に直結しており,特にCo酸素八面体はeg軌道秩序に伴うヤーンテラー歪みとスピン状態の違いを反映するため,その結晶構造を明らかにすることは電子状態を議論する上で重要である。これまでの研究から酸素欠損の無秩序相,酸素秩序相および強磁性相と考えられている温度に対応する700K,500K,室温での単結晶X線回折実験を行い,高温相では2a × 2 a × 4 a(aは立方晶ペロブスカイト構造をベースにした格子定数),中間相ではさらに2倍周期構造,強磁性相は高温相の4倍周期構造を反映する超格子反射を明瞭に観測し,周期構造はこれまでに得られている粉末回折の結果と一致することが明らかとなった。最終的な構造解析のためのデータ収集は行ったが,約0.1mm角の結晶でも双晶であることが確認され精密な反射強度の見積もりは,次年度の課題である。また,単結晶中性子回折実験の準備として,J-PARC/物質・生命科学実験施設(MLF)/BL-18(SENJU)での磁気散乱の検出可能な試料サイズの検証を行うともに,高温実験のための試験的ヒーターの導入に着手した。
2: おおむね順調に進展している
主だった実験のうちの一つ,単結晶X線回折実験に関しては各相に対応する温度での測定を実施した。構造相転移の対称性低下に伴う複数ドメインによる解析の困難さが残るもののおおむね予想した通りである。次の目標の磁気構造解析のための単結晶を用いた中性子散乱実験に必要な高温装置の導入は,2013年度に行えなかったが,全体としては,おおむね順調に進展しているといえる。
計画通りに研究を推進していく予定であるが,今後,磁気構造解析を実施するためには核散乱に乗った弱い磁気散乱強度の定量的な見積もりが重要である。そのため,2014年度は,第一段階として,精密な結晶構造パラメータを得るためにこれまで測定した各相での単結晶を用いた結晶構造データと粉末回折法との併用によって精査を行い,原子変位を十分に精度良く捉えることを目指す。
研究実施に必要な試料環境,特にJ-PARC/MLF/BL-18での高温装置の導入を2013年度に行う予定であったが,装置の仕様の最適化を図るために,既存の機器と組み合わせた試験的ヒーターを使用し,初めに安全性の試験と実験手法の確立を目指した。2014年度以降で,2013年度に導入した簡易的な既存システムでの特性試験を行い,その結果をもとに,実験に最適化した高温装置の制作を行い,高温試料環境を整備する予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (4件)
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