研究課題
酸素欠損型ペロブスカイトのコバルト酸化物Sr3RCo4O10.5(R=Y,ランタニド)における強磁性(フェリ磁性)の磁気構造を明らかにするために,単結晶中性子回折実験の実施と単結晶X線回折法による構造パラメータの決定を試みた。中性子散乱では,磁気反射と核反射は重なるため,磁気反射強度を見積もるためには精密な原子の座標や占有サイトパラメータが必要となる。また,粉末X線回折データからは得ることができなかった構造パラメータを決定することで,Co酸素八面体の体積から軌道秩序状態やスピン状態の知見を得ることができる。このように信頼性の高い構造パラメータを得ることは重要であるが,これまでの結果から室温強磁性(フェリ磁性)相は,高温相の4倍の長周期構造をもち,結晶学的に16のCoサイトが非等価になることが予想されている。さらに,立方晶ペロブスカイト構造を基本格子に持つ本研究物質の単結晶では,高温相でもa,bおよびc軸が混在したドメイン構造をもち,室温相では対称性の低下によるドメインを有する。これらの問題から単結晶構造解析では,各反射指数の同定を慎重に行い,重なり合ったピークからそれぞれのドメインからの強度を抽出する必要があった。積分強度の算出では二次元プロファイルフィッティングにより,主要なドメインからの反射強度を見積もり,最終的には双晶による構造解析を行った。得られた構造パラメータによる各CoサイトのCo-O 距離から,室温相ではab面内にintermediate spin状態とhigh spin状態が変調構造をもつ軌道秩序状態であることが明らかとなった。
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J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 114711-114715
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.85.114711