研究実績の概要 |
本研究は、微細加工されたSi単結晶を吸収体とする超伝導トンネル接合(STJ)検出器を開発し、高感度かつ高分解能のX線分光検出を実現することにより、X線吸収分光法に革新をもたらすことを目的としている。この目的の実現のため、STJ検出器を形成したSi基板に微細加工を施す技術の研究、およびSi基板に施す加工がSTJ検出器に与える影響の評価を行っている。本年度は最終年度であり、初年度、2年度に確立した加工方法を基に、より高いエネルギー分解能が得られると期待される構造の素子の作成を行った。 STJ検出器を産総研CRAVITYで試作した。裏面の加工はNIMS微細加工ナノテクノロジープラットフォームに依頼した。 今年度の加工においては、裏面加工の際に、メタルマスク除去後、表面に四角錐状の穴が無数に生じた。メタルマスクの材料としてアルミニウムを用いていたが、アルミニウムの除去に異常に時間がかかっており、エッチングの際にアルミニウムが化合物、たとえばシリサイドを形成している可能性がある。これを避けるため、マスクの厚さを従来の3倍としたもの、マスクの材料をクロム、MgOとしたものを試作した。マスクを厚くすること、またはMgOとしたところ、四角錐状の穴の数、大きさは減少した。しかしながら四角錐状の穴は依然残っており、設計通りの形状を実現する作成プロセスの研究が必要である。 全期間をまとめると、Si単結晶をX線吸収体とするSTJ検出器を製作した。歩留まりを高めるピクセル形状・配置を検討し、9割の歩留まりを実現した。X線検出特性は、5.9 keV にてエネルギー分解能135eV, 読出しノイズ18eVである。試作した100素子アレイを用いKEK-PF・BL-11Bにて2-4keVの微量軽元素のX線吸収分光を行い、濃度0.1%の硫黄の吸収スペクトル測定に成功した。
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