研究課題/領域番号 |
25390143
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
出羽 英紀 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主幹研究員 (20360836)
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研究分担者 |
水野 明彦 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主幹研究員 (30360829)
冨澤 宏光 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 副主幹研究員 (40344395)
谷内 努 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主幹研究員 (60360822)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グラフェン / 電気伝導 / 空洞共振器 / 熱CVD / 成膜 / 加速器 / 加速空洞 / 高周波 |
研究実績の概要 |
本研究においてはグラフェンの高い電気伝導度を利用した高周波空洞を製作し、その高周波特性を評価することを最終目的としている。これを実現するために銅表面上を約1000℃まで加熱し、水素及びメタンガスを流すことにより銅表面上にグラフェンを成膜する熱CVD方式を用いたグラフェン空洞の製作を計画している。 平成27年度はCVD装置で真空排気系の改良を行い、CVD装置の真空試験を行った。CDVの真空度はスクロールポンプで引いた場合6.0x10-1Paに到達し、成膜に必要な真空度が得られることを確認した。 次に高周波空洞の試作に関しては、グラフェン空洞のQ値を測定する最適な空洞として、TE011モードの円筒型空洞共振器を選び、3つの周波数(9.2GHz,12.2GHz,18.3GHz)の無酸素銅空洞試作を行った。TE011モードを選んだ理由は、円周に平行な電場(電場が同心円形)及び動径方向の磁場(磁場が放射形)が発生し、円筒と両側の端版間で電流が流れないため、円筒と端板の間の接触部での電気的な損失を無視することができ、このことから接触部の電気的な抵抗の大小により空洞のQ値が変化せず、材質によるQ値の違いを比較するのに有利であるからである。TE011モードの問題点としては共振周波数がTM111と一致し縮退していることで、縮退した状態ではQ値の測定において、TE011とTM111が混ざった状態で測定することになり、正確な評価が難しい。この縮退を分離するために、試作空洞においては縮退分離のための溝を円筒と端板の間に設けた。 さらに空洞の熱CVD成膜においては、1000度の高温になるため、石英菅内で無酸素銅空洞を支持するためのモリブデン製の成膜用ジグを製作した。このジグは円筒空洞の両端に結合され、ヒーターからの熱を等方的に受けられるように円筒空洞を石英菅の中央に固定するのに用いられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
27年度までにおいては、 熱CDV装置の製作、真空システムの整備、無酸素銅高周波空洞共振器の製作が完了した。しかしグラフェンの製膜試験及び空洞共振器へのクラフェンの製膜、グラフェン空洞の高周波特性の評価が完了していない。27年度より熱CVD装置の試験を開始したが、準備した真空装置の能力が不十分であったためその改修に時間を要したのが主な理由である。実施した真空システムの改修は、1. スクロールポンプのメンテナンス、2. ポンプの外部排気系への対応、3. 窒素パージ系統の増設、4. 真空ポンプ内臓の自動開閉バルブの整備、5. CVD装置の石英菅用ロートレット部で生じた真空リーク対策等である。現在真空装置は正常に動作しており、CDVの真空度はスクロールポンプで引いた場合6.0x10-1Paに到達し、成膜に必要な真空度が得られることを確認している。 一方高周波空洞の試作に関しては、グラフェン空洞のQ値を測定するの最適な空洞として、TE011モードの円筒型空洞共振器を選び、3つの周波数(9.2GHz,12.2GHz,18.3GHz)の無酸素銅空洞の試作を行った。今後この空洞の高周波評価を行ったのちに内面にグラフェンを製膜しグラフェン空洞を製作する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の研究を推進していくために、以下のような方針で臨む。まずグラフェンの製膜実験を最優先で実施する。すでに熱CDV装置は完成し、真空システムについても必要な改修は行った。現在加熱試験、及びガスの導入試験を進めているところであるが、現状特に問題はないと考えられる。製膜実験はまず銅薄膜上にグラフェンを製膜し、ガス流量、ヒーター電流、ヒーター加熱時間等の製膜条件を出し、安定してグラフェンを成膜できる条件を探索する。特に大面積の曲面上に高品質のグラフェンが安定して成膜できる条件を見い出す。条件出しが完了したら、27年度に製作した無酸素銅の空洞共振器の銅表面上にグラフェンを製膜する。製膜にあたっては電解研磨等の成膜前の表面の前処理についても検討を行う。グラフェンが製膜された空洞の高周波特性をグラフェン製膜の有無で比較し、グラフェン空洞の高周波特性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はグラフェンの銅表面への製膜を行わなかったため、その費用分の残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はグラフェンの銅箔への製膜、試験用無酸素銅空洞への製膜、グラフェンの製膜品質の評価を実施する。次年度使用額をこれに充当する。具体的には、グラフェンの銅箔への製膜に関しては、グラフェンの成膜時に使用するガスを購入する。試験用無酸素銅空洞への製膜に関しては、製膜に使用するジグ等を購入する。グラフェンの製膜品質の評価に関してはラマン分光等の分析を行う。
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