研究課題/領域番号 |
25390147
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
島 弘幸 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (40312392)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノカーボン / 電磁遮蔽 / マイクロコイル |
研究概要 |
スマート材料とは、外部刺激や環境変化を自ら関知して、能動的な応答・機能を示す機能性材料を指す。中でも動植物生来の「カタチ」や「動き」を模倣したスマート材料は、材料力学・エネルギー・環境などの各分野において需要が極めて高い。こうした生体模倣の視点に基づく新規スマート材料の数理設計を目的として、初年度の研究では主に、各種の果実・野菜が自己組織する畝状隆起形状を模倣したナノデバイス設計を推進した。具体的には、曲面型ナノ炭素材料に外圧を加えた際の、弾性座屈と塑性変形プロセスを、理論・数値計算の両面から推算した。理論解析においては、連続体弾性シェル近似に基づく安定性評価を行い、多層グラフェン構造に内在する炭素原子間の「強い」共有結合と、隣接炭素シート間の「弱い」分子間力の競合が、炭素シートの畝状座屈を誘発する理論背景を明らかにした。また数値計算シミュレーションでは、外圧下におけるナノ炭素シートの原子配置と電子状態を、独自の分子動力学計算コードにより解析し、畝状座屈状態におけるシート内炭素原子の立体配置と電子状態を算出した。これらの内容に加えて、初年度の研究ではさらに、コイル形状の力学特性を活用した電磁遮蔽材料の設計を行った。コイル形状をもつ構造体は、ツル性植物・巻貝に始まり、生命体を構成するDNA分子・蛋白質に至るまで、私たちの周りに普遍的に存在する。そこで、導電性マイクロコイルの誘電損失と、コイル径ならびにコイルピッチとの相関関係を記述する基礎理論を整備し、同材料の電磁波吸収特性を評価する基礎方程式を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の実施内容として計画していたテーマを、おおむね順調に遂行することができたため。また、当該研究に係る成果を、12件の原著論文(全て査読あり) および 3件の図書 (うち1件は単行本・共著)として発表することができた。加えて、学会発表7件 (うち国際会議における招待講演6件) を行った。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロコイルを基礎材料とした電磁波シールド材料の開発においては、ナノカーボン系の実験専門家と連絡を密にし、理論予測を検証するための具体的な実験方法を立案する。それと並行して、コイルの巨視的な伸び・曲げ・捻りに起因する分子レベルでの構造変化(隣接原子間距離の変化)と、物質の導電性・誘電性との相関関係を独自の数理モデルを用いて解析し、変形が加わった際の応力分布と電磁応答特性変化を数値的に解析する。この解析を通して、電気機械デバイス(=機械的変形による電気特性変化を活用した機能素子)としての応用可能性を吟味する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、理論予測に係る検証実験の提案を初年度のうちに行い、その予備実験に必要な消耗品の購入と研究協力者との議論を行う予定であったが、得られた理論結果が当初の予想と異なったため、さらに詳細な解析を行う必要が生じた。この軽微な計画変更に伴い、若干の未使用額が生じた。 研究計画の一部を変更し、マイクロ炭素コイルの電磁応答解析と国内外の研究会における成果発表を次年度に行うこととし、初年度の未使用額はその経費に充てることとしたい。
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