研究課題/領域番号 |
25390149
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
芳松 克則 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (70377802)
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研究分担者 |
岡本 直也 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80547414)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 計算科学 / 数理物理 / 流体物理学 / 乱流 / ウェーブレット |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、計算科学的手法により(1)乱流の動力学、回転や密度成層などに起因する非等方外力を受けた乱流および固体壁境界を持つ乱流の動力学、を解明すること、(2)その知見に整合するウェーブレット解析を用いた乱流の情報縮約手法を開発することである。規範的な乱流である平行二平板間乱流、3次元一様乱流に的を絞って研究を実施した。平成26年度に得られた成果の概要を以下に示す。 (1)一様等方性乱流における小スケール渦の構造と動力学が大スケール乱流統計に及ぼす影響について定量的に評価した。小スケール渦は、新しく開発した外力により破壊した。典型的な小スケール渦である強いチューブ状の渦が破壊される程度の外力の強さでは、大スケールの統計にはほとんど影響がないことを示した。外力が小スケール渦の構造と動力学を完全に破壊するほど強い場合は、大スケールの統計にも多大な影響があることが分かった。 (2)平行二平板間乱流の秩序渦度構造を抽出した。3次元直交ウェーブレット変換を用いた場合、乱流の統計・動力学が良く保持されるには、渦度のウェーブレット強度の上位3%程度だけが保持されればよいことが分かった。なお、壁鉛直方向には滑りなし境界条件を満足するよう有限区間直交ウェーブレットを用いた。一方、壁水平方向だけに2次元ウェーブレット変換を用いた場合は、渦度のウェーブレット強度が上位約10%まで保持する必要があった。また、複雑形状をもつ固体壁境界を直交座標系で容易に扱うことができるペナライズ手法の検証を、断熱壁を側壁にもつ円柱容器内熱対流に対して行った。対流が起きる臨界レイリー数もよく再現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直交ウェーブレット解析を用いた平行二平板間乱流の秩序渦度抽出およびその乱流への役割に関する研究成果が、Ninth International Symposium on Turbulent Shear Flow Phenomena, June 30-July 3, 2015, The University of Melbourne, Australiaに採択されたから。また、平行二平板間回転乱流の直接数値計算も実施し、回転乱流に対する壁面の影響に関する研究も開始できたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きスーパーコンピュータを駆使して研究開発を進める。ウェーブレット解析を用いた乱流の情報縮約手法について、海外共同研究者のSchneider 氏(Professor, Aix-Marseille大学)、Farge氏(Director, ENS)との連携もこれまで通り密に行っていく。さらに、平行二平板間回転乱流および非等方乱流のエネルギー減衰に関して、Davidson氏(Professor, Cambridge大学)と研究打合せ、議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
名古屋大学スーパーコンピュータの更新による計算機使用料、とくにデータ保持料、の低減により、想定よりも安価に当該スーパーコンピュータを利用することができているため。ウェーブレット解析を用いた乱流の情報縮約手法の開発打ち合わせのためのマルセイユ滞在日程が当初予定よりも短くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究を一層効率的に進めるため、海外の共同研究者との連携をさらに深化する。未使用額はそのための渡航費・滞在費に充てることにしたい。
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